Move it or Park it!


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Bicycles in Tenjin

燃料資源を使ったり排気ガス汚染の心配もない自転車は、環境にもよいし運動不足の体にもよい。と、本当はその利用が推進されるべく自転車だけど天神地区は残念ながら逆。年々数が増える自転車が歩道に溢れ歩行者の邪魔となり、これが深刻な問題になっている。果たしてその解決法はあるのか?

 天神には駐輪場外の駐輪、つまり放置自転車がたくさんはびこっている。放置自転車問題は、確かに生活の中で起こりうる問題-例えば暴走族とか、学校内ではいじめとか-と比べるとそんなに深刻ではないように感じるかもしれない。しかし、公共の場を利用する人々にとって迷惑になる放置自転車問題は実際には深刻で、市役所をはじめとする様々な機関が現在その対策を練っているのだ。
 2年に一度、全国において自転車実態調査が行われる。これは電車や地下鉄の各駅半径500mに駐輪されている自転車の数を調査するものである。調査は10月の晴れた平日の10:00~11:00を基準に行われる。平成11年の調査では、天神地区は池袋の次に全国でも自転車の多い地区であったが、昨年の調査において遂に1位となった。その数6,606台、うち約4,600台が放置自転車であった。駐輪の数のみならず、放置自転車数も全国一という結果。なぜこんなに天神には自転車が溢れ、こんなにも放置自転車が多いのだろうか。
 国民の2人に1人が自転車を持つという自転車大国、日本。福岡市役所の調査によると、天神はさらにその割合が高い地域だそうだ。この自転車を利用するのは特に若い世代。現在自転車使用率の75%を29歳以下の若者たちが占めている。ショップが多い天神では若い世代の天神で働く率も高く、またバブル崩壊後、彼らは若くして天神に自転車で通える距離に住めるようになった。この現象とともに、交通費を節約しようとする若い人たちが自転車を利用しているのが、自転車の増えた大きな原因となっているのは一目瞭然だ。
 天神近郊の自転車数はすごい勢いで増えている。実態調査であがった昨年の駐輪数は1997年のそれとくらべると、ほぼ2倍。しかもこの数は午前中に調査されたもの。市役所の見解によると、夕方4時頃がピークで、その数は午前中の倍であろうと予測されている。
 天神に設置されている有料駐車場(使用料1回100円)に駐輪できる自転車の数はおよそ3580台(路上駐輪場含む)。この数は、実態調査であがった台数のおよそ半分。にもかかわらずこれら有料駐輪場にはまだ空いているスペースがある。なかでも警固公園の地下駐輪場はその利用率がかなり低い。反面、路上駐輪場は常に満車状態。また地下鉄空港駅に隣接した有料駐輪場の場合も、常に満車状態、もっとスペースを増やして欲しいとの声も上がっている。このことから、人々が駐輪場に駐輪しないのはただ100円が惜しいという理由ではないのがよくわかる。ほとんどの人々は自転車が便利だから乗っているというところに注目しよう。例えば警固駐輪場は地上から自転車を出し入れするのに約10分かかる。こうなっては自転車の利便性がなくなってしまう。不便さゆえに利用されない駐輪場の悲劇だ。とはいえ、警固駐輪場にも特権がある。ここでは常時自転車を管理する人たちがいる。ゆえに盗難率が多い天神において、自転車を守りやすい場所であるし、万が一自転車が盗まれた場合には保証もある。
 自転車を放置駐輪すると3日の猶予が与えられ、撤去される。天神地区のように自転車放置禁止区域に駐輪した場合は、すぐに撤去だ。天神地区では撤去された自転車は那の津にある保管所に保管される。ここは約3,000台を収容できるが、実際には全然スペースが足りないほど、撤去されるべく放置自転車が天神には溢れている。天神に限らず福岡市全体の状況もすごい。昨年は全市合計で約39,000台の自転車が撤去された。その中で、毎年持ち主の通報によって引き取られる自転車は約30%。10%は業者に売られ、再利用車として売られる。5%は盗難車として警察より持ち主に通報され、引き取られる。他の5%は身障者の施設に寄付し、その施設が整備して再利用車として販売する。残りの50%、約20,000台の自転車は、ただ破棄されるのみである。
 この状況は市の予算問題にも深く関わってくる。放置自転車の撤去とその保管にかかる費用は、福岡市内でなんと年間1億円。1台にかかる費用は約2,200円だ。放置自転車を保管所から引き取る場合、その持ち主は2,000円を負担しなければならないが、これで計算すると全ての自転車が引き取られない限りは、多大なる赤字を市は自転車対策に抱えることになる。撤去自転車の引き取り手が増え、その負担金により現在の赤字が緩和されるのならば、この予算が他の文化予算などにまわせるかもしれないということを、気に留めておきたい。
 こういったように、放置自転車の対応に市も頭を抱えている。単に駐輪場を増やすことができればいいのだが、それもままならない。すでに全市で年間5億円以上という高額な予算が有料駐車場の管理費にかかっているし、実際問題これ以上スペース的にも天神地区に新しく駐輪場を設置することは難しいからだ。では、どうにもならないかというとそうでもない。1982年以降、新しく建てられるビルには駐輪場の設置が市により規定されている。つまり、今後新しく建つビルの駐輪場は、放置自転車の緩和に繋がってくるだろう。実際2004年に旧NHK跡地に新しく建つビルには地下に500台収容できる駐輪場が予定されている。隣接して市が運営する600台収容の駐輪場も計画されている。使い勝手がよく、多くの人々が利用する駐輪場になることを願う。

 いろいろな現状をあげてきたが、最終的には駐輪の問題はマナーで緩和されることが出来るのかもしれない。福岡市は、「ごみのポイ捨てや禁煙場所で喫煙をするのはモラル意識がかけている、と多くの人々が思うのと同じように、駐輪に関してももっと人々が関心を持つともっと現状はよくなるだろう」とも考えている。実際、天神のような街中の放置自転車は、多くの歩行者-特に車いすを利用する人々や、乳母車を使用する人々-の通行の妨げになっている。一人一人が駐輪のマナーを守っていくと、彼らの通行はよりスムーズになり、活動の範囲も広がるものだ。これまで“駐輪場にお金を払いたくない、駐輪場まで行くのが面倒くさい”と考えていた人々にも、これだけは心に留めておいてもらいたい。

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