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アジア人だって外国人よね?

ストランの店員はとても丁寧で、食事も文句無し。だから、友人デイビッドと記念に写真を撮ろうと思ったの。「シャシン、オッケー?」と近くにいた人にデイビッドが聞くと、若い男性が私たち夫婦とデイビット3人の写真を撮ってくれた。するとシャッターを押してくれたその彼が、今度は私たちに向かってジェスチャーしてる。最初は何を言いたいのかわからなかったけど、どうやら一緒に写真を撮りたいらしい。「You want to take a photo with us?」って聞くと、彼は「ノー…」と言い、「オンリーユー」ってデイビットを指さしてこう言ったの。「ウィズ マイ ファミリー」と。そして今度は私たちの方に来て優しくこう言ったの「You help take photo」。
 デイビットは席に着くなり「やっぱり、僕は目立つんだ」と、ウィンクしてこう言った。「彼らに差別の意識はないから、気にするなよ。」確かに彼の見かけは悪くない。サッカー選手のヴァンパーシーにちょっと太めのアメリカ人を混ぜた感じかな。けれども、もしそこにかっこいいアジア人がいても、わざわざ声をかけて写真を撮るなんてことはなかったと思う。

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 これは私たちが日本で経験した象徴的な出来事のひとつ。私たちは、観光客のように振る舞う中華系シンガポール人だけど、日本人と大差ない見かけだから、日本人の写真撮影の対象外。欧米系のデイビッドのつたない日本語は賞賛の対象だけど、日本語検定を受けて日本語堪能な私たちは褒められることはまずないわ。語学学校の講師にアメリカ人を優先的に選んだり、街頭インタビューで見かけが欧米人っぽい人だけにインタビューするのと同じ。

 大半の欧米人にとってほぼ完璧な休暇場所である日本のもつ独自の文化は、時として現代的で、上品な社会は欧米の自宅にいるかのような居心地の良さを与える。そして日本人の“ザ・欧米人”に対する羨望が、エキゾチックな冒険を探し求める欧米人にとって、日本が人気の観光地であることを強固なものにしている。例え忍者やオタクの狭間で言いたいことが伝わらなくても、結局は居心地がよくて何とかなる場所を求めてるのだから。

 しかし、似たような容姿や、文化や歴史、言語をシェアしているにも関わらず、日本にいるアジア人は外国人として特別扱いされるのでもない。そして、日本人に似ているからといって日本人のように扱われるわけでもない…。

 だからといってひねる必要はないけれど、これから日本に来るアジア人が、日本社会に感情的に引き裂かれたように感じたとしても、それは似通っていて、過去を知る者同士だからこそ、日本人は私たちのようなアジア人に対して、興味よりも先に経済的な競争心を掻き立てたり、以前の教養のない社会を思い出したりするのかもしれないことを知っておいてほしい。確かに、日本に居るアジア人の全てが行儀が良いわけではない、とアジア人の私すら感じるくらいだから、私たちのような日本に住まうアジア人が、いかにも欧米人な彼らと同じように、日本人の好意を受けるには限界があると思うのも分かる。けれど、それでも私たちは、アジア人国外住居者に待ち受ける明るい未来を期待して、諦めずに努力するべきだと信じている。日本人にそっくりな“外国人”で終わることなく、言語習得や日本の習いに真摯に取り組んでいるアジア系の外国人は、時間はかかるけど、日本の好意を得るだけでなく、欧米人には決して開かれない『懐』へと受け入れられるんだから。日本のように住み易い社会で、暮らしていけるなら、充分に価値ある努力と時間だと思うけど、ドーデショね?

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フィオナ・チャン(ジャーナリスト) &ジ・タン(弁護士)、シンガポール

Originally published in Fukuoka Now Magazine (fn176, August 2013)

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Fukuoka City
Published: Jul 25, 2013 / Last Updated: Jun 13, 2017

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