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ナニジン?帰属意識って必要?

どこから来たの?」日本人の子どもたちが期待の眼差しを私に向ける。どう答えるべきか考えていると「アメリカ?カナダ?」「ペルー?」と子供たちの質問が続く。軍人の子としてドイツで生まれ、アイルランド北部で育ち、数年間をスコットランドで過ごした私は、(酔っぱらったり、怒ったり、箍が外れない限り)訛やアクセントもなく、イギリスとアイルランドのパスポートをもっているからその質問は難しいわね。でも、私のこの複雑な国籍については、多くの日本人が信じている地理的理解によって、ますます奇妙なものになるの。

アイルランド人の父とスコットランド人の母に育てられたことは、私や姉にちょっとした愛国心問題を引き起こしたのは事実。特にラグビーがあっている時期は、イングランドを倒したチームはどのチームであっても応援するようにしていたの、家族がうまくいくためにね。これが核心よ。私たちは少しだけアイルランド人で、少しだけスコットランド人。絶対にイギリス人ではないの。当然のように抱いていた反イギリス人感情は、スコットランドで働く日本人にこの複雑な国籍を説明してもなお「あなたはイギリス人よ」と宣告されたことで吹っ飛んだけど。スコットランド国歌をみんなが知ってることは期待しないけれど、スコットランドがイギリスの一地方と言われると、罰として「ブレイブ・ハート」を見せつけてやりたくなるわ。

そして時には、ビートルズやスコーン、女王などの英国の象徴的な話題から逃れたい時に、表向きな言い訳としてアイルランド人だからっていうようにしている。これらは単純明快だから、他の国の人でも取り違えることは少ないはずよ。もちろん北と南の問題は少し扱いにくいから、そこは少し置いておくとして。稀に私がどの島出身かを聞き出してアイスランド出身だと分かると、英語を話していることにも戸惑いだす人がいるけど、昔風にいえば、私は英語のネイティブスピーカーだから、イギリス人という答えになるみたい。あいにく日本では、見た目が国籍を表すものという別の見解もあるみたいで、日本語を話さない私は、確かに日本人との繋がりもないんだけど、でも、ロシア人っぽい姿カタチをしているから、ロシア人って言われてもねぇ…。

国籍についてのやりとりがようやく終わると、残るは日本の学校ではどのようにして地理を教えているのかっていう不安よ。ま、イギリスとアメリカの政治的関係がときどきおかしなことになるけど、私の生徒が考えているのと同じよう、英語を話す国だからって一つの国としてまとまるわけではないから、これはどうしようもないことね。でも私ここではイギリスの地理については今だにはっきりとしてないし、イギリス海峡の存在はおろか、フランスと同大陸だと思っている人もいるくらいだから、イギリスが島だってことに驚くはずよ。だって私はイギリスの首都パリに行く、っていう学生達の夢を木っ端微塵にしたこともあるし、世界地図上で日本以外の国を指し示すことができない学生の多さに呆れかえっているわ。

期待した答えを待ち続ける私の生徒たちに話を戻すわね。例えば、私は北海道出身ということにして、北海道出身の人は少し変わってる、ということに結論づけるのよ。世界が北と南で文化が違うことを知るのにはいい方法じゃない?でも、これほどの地学的不理解は、経済低迷している国にとっては悩ましい問題よ。もちろん地理的な知識は、それぞれの国が直面する問題、例えば文化的、政治的環境の関係とうまくやっていくことができる、理解ある市民をつくるために必要なんだと思うんだけど、これってドォーデショ?

ベッカ・マックスウェル
スコットランド&アイルランド
編集者

Originally published in Fukuoka Now Magazine (fn161, May 2012)

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Fukuoka City
Published: Apr 25, 2012 / Last Updated: Jun 13, 2017

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