福岡を拠点に暮らしている私たちにとって、タイはお気に入りの旅先の一つです。現在、福岡からは3つの航空会社(エアアジア、タイ国際航空、タイ・ベトジェット航空)がタイ・バンコク直行便を運航していてアクセス抜群。記憶にあるだけでも10回以上はタイを訪れています。こでまではバンコクに数日間滞在した後、南へ向かい、ビーチやプール、グリーンカレーにパッタイ、そしてココナッツやフルーツを楽しんでいました。
しかし今回の私たちは、「これまでとは異なる何か」をタイに求めました。そして、アドベンチャーも!そこでタイの中でも北部に目をつけたのです。
タイの新たな一面
まだ行ったことがないタイ北部。調べれば調べるほど、興味をそそられることだらけです。自然、冒険、カルチャーがあり、いわゆる”観光地”にはない魅力にあふれています。さらに、タイ北部は「サイクリストの楽園」としても知られていること知り、完全に心を奪われてしまいました。
タイ北部の11月から2月は乾季で過ごしやすい気候です。丘陵地と整備された道路、そして美しい景色を求めて世界中からサイクリストが集まります。加えて、地元の人はフレンドリーで、珈琲豆も生産されているためコーヒー文化も急成長中。美しい寺院もたくさんあり、地域を肌で感じることができるサイクリングが好きな人にとって理想的な旅先です。
なぜ自転車で旅するの?
念のために伝えておくと、私たちは本格的なサイクリストでもアスリートでもありません。ただ、自転車での探索が好きで、ここ数年は特にはまっています。自転車は遊び心があり、爽快で、その土地を体感できる移動手段としても優れた乗り物です。歩くよりも広い範囲を軽やかに回ることができ、周囲の景色や音、匂いを感じながら進めるのが魅力です。加えて、運動にもなるし、環境にやさしく、適度なチャレンジがあるので、達成感も味わえます。
今回の旅は、長距離でない限り、移動のほとんどはレンタサイクルを使いました。サイクリングウェアを着て、細いタイヤの自転車に乗るスキルは必要ありません。一般的な自転車に乗ることができれば十分です。交通ルールを守って安全を第一に、旅先での自転車での探索を楽しみましょう!
チェンマイとその周辺でのサイクリング
今回のアドベンチャーは、タイ北部へのゲートウェイであり、タイ第2の都市チェンマイから始まりました。堀と城壁に囲まれた約1.5km四方の旧市街は活気があり、ショップや市場、カフェやレストランが集まっています。ここは自転車をレンタルしたり、サイクリストとつながるのに最適な場所です。
実際にはチェンマイを拠点に、ナーン、プレー、ランパーンといったタイ北部の各県へも足を延ばしましたが、それはまた別の機会に紹介しますね。まずはチェンマイの話から!
シェアサイクル「AnyWheel」で市内散策
チェンマイを自転車で探索するのは大変そうに感じるかもしれませんか、実はそうではありませんでした。地元のドライバーは二輪車が同じ車線を走る道路事情に慣れていて、スピードもゆっくりで、比較的フレンドリーな運転をします。また、この街のコンパクトなレイアウトも自転車での移動に適しています。
私たちは「AnyWheel」というシェアサイクルを利用しました。旧市街を気軽に移動できる上に、料金は30分10バーツ(約40円)で価格も手頃です。寺院や市場、カフェを巡るのにぴったりです。
自転車がレンタルできる場所
長距離を走る場合は、しっかりした自転車が必要です。チェンマイの街中でレンタサイクルといえば、真っ先に名前が上がる「NK Bicycle Rental Shop」には、ツーリング用の自転車、町乗り用の自転車、折りたたみ自転車、Eバイクなど、豊富な種類の自転車があります。メカニックでもある店主はフレンドリーで英語も話します。
本格的なロードバイクを求めるならサイクリスト御用達の宿「Vanilla Residence」のレンタルバイク、自転車で旅するバイクパッキング向けのサポートなら「Triple Cats Cycle」がおすすめです。それぞれ特徴があるので、自分のスタイルに合ったお店を探してみてください。
Triple Cats Cycleのオーナー兼メカニック Nuさん。店名の由来となった猫の一匹と。
市内サイクリングツアーに参加してみた
まずは、チェンマイでのサイクリングに慣れるためにガイド付きのツアーに参加しました。旧市街にあるサイクルショップ「Trailhead」のガイド、レックさんと一緒に細い路地を抜けながら、チェンマイの隠れた名所を巡りました。
伝統的な鍛冶屋や、ひっそりと佇む寺院、市場にあるフルーツ売り場など、地元の人しか知らないようなスポットを説明付き(英語)で訪れたこと。特に市場で食べた旬のフルーツやお菓子が忘れられません。このツアーは、初心者も安心して楽しめるのでおすすめです!
背景を学ぶと、その場所が生き生きと感じられ、忘れられない体験になります。
固い皮を剥き、白い果肉に果汁が包まれた状態のココナッツ。ぷるんとした果実もココナッツウォーターも美味しい!
細い路地を通るのは、サイクリングの醍醐味の一つ。
タイの伝統菓子「カノムピア」はパイ生地の月餅
自転車に乗る時は手信号を使って安全に!
田舎道をのんびりサイクリング
街中を探索する「Trailhead」のサイクリングツアーがとても楽しかったので、田舎を探索するサイクリングツアーにも参加しました。
街の喧騒を離れ、穏やかな田園風景の中を進む28kmのルート。スタート地点までは車で移動し、そこから田畑や村、森林をゆっくりサイクリングを楽しみます。途中、米の脱穀の様子や滝を見学して、休憩は現地のスイーツやフルーツ、そして、新鮮なココナッツウォーターで喉を潤します。難易度は低めなので初心者でも気軽に参加できます。自然や現地の暮らしに触れてみたい人に特におすすめです。
受付を終えて自転車を積み込んだら出発!
サイクリングツアーのスタートは、車で20分程の場所にある寺院見学から。
整備された道が大半ですが、あえて森に入って未舗装の道を走るアドベンチャー!
水田の隣を走るのはハイライト!
乾季なので緑は少ないけれど、田園風景はやっぱり美しい
丸木の橋を自転車を持って渡るスリリングな体験も!
建物も看板も車もない。ただただ田舎の美しい風景が広がります。
サイクリングの最後は美しい滝。
竹筒に餅米と黒豆を入れてココナッツミルクで炊いた「カオラム」。また食べたい!
ランチはパイナップルに入ったチキンライス!
ジャングルトレイルにも挑戦
サイクリングにハマり、自信もついてきた私たちは、46kmのジャングルトレイルにも挑戦しました。チェンマイに移住したイギリス出身のオーナーが運営する Let’s Ride. のツアーは、ガイドと一緒に高性能のEマウンテンバイクで走ります。私たちのスキルや体力に合わせてコースを調整してくれるので、最大勾配14%の坂道だって登れました。
途中はコウモリが住む洞窟を見たり、仏像を拝んだり、滝を登ったり、ランチを食べたり、スリリングでチャレンジングなツアーで、ゴールした時の達成感は忘れられません。
チェンマイはマッサージ店もたくさんあるので、ライド後は筋肉をほぐしてリラックスしよう!
高性能のEマウンテンバイクを積み込んで出発!
スタート直後に急な登り坂!躊躇する間もなくジャングルに入ります。
自然の地形を活かしたMTBフィールドで飛び跳ねるガイド…
森の中の洞窟
もう一つの洞窟には仏像とコウモリが!
人気の観光地ブアトーン滝(Sticky Waterfall)は、その名の通り滑らないからスイスイと滝登り
ランチはローストチキンとソムタム(スパイシーな青パパイヤのサラダ)、そしてガパオライス
無事に完走!
ロードサイクリングと地元コミュニティ
チェンマイにはアクティブなサイクリングコミュニティがいくつもあり、初心者から上級者まで多様なサイクリストが集まります。経験豊富なロードサイクリストなら、「55ライディングクラブ」をチェックしてみて。毎週土曜の朝に行われるライドには、多い時には100人程が集まり、約90kmのライドを楽しみます。ペースは速めですが、仲間意識が強く、参加する価値は十分にあります。サイクリングを愛する地元の人や、海外からのサイクリストとの交流の場としても最適です。
55ライディングクラブのリーダー、トゥム(右)、ゲストライダーたちと会話中。
週末の始まりはサイクリング。スタート地点でみんな笑顔!
サイクリストフレンドリーな宿泊施設
チェンマイはサイクリングディスティネーションとしても人気のエリアなので、サイクリスト向けの宿泊施設が充実しています。例えば「Vanilla Residence」は、自転車愛好者にとって必要なサービスを備える理想的なホテルの一つです。大切な自転車を安全に収納できるスペースや、ツールも揃っているメンテナンススペース、洗車場、さらには高級ロードバイクのレンタルも可能です。プロチームや本格派サイクリストに人気のため、予約は早めがおすすめです!
Vanilla Residence(バニラ・レジデンス)は旧市街から程近い場所にあります
洗車場で愛車を洗う海外からの宿泊者。すぐそばに、メンテナンス用の工具も完備。
今回の旅では「Kantary Hills(カンタリー・ヒルズ)」と「Melia Chiang Mai(メリア・チェンマイ)」に泊まりました。いずれも繁華街にありながら部屋は静かで、それぞれ異なる魅力があります。
カンタリー・ヒルズ・チェンマイ
チェンマイのおしゃれな街歩きエリア、ニマンヘミンにある「カンタリー・ヒルズ」は、安定したサービスと便利な立地で、長期滞在者に人気のサービスアパートメントホテル。ショッピングも飲食店も徒歩圏内にあり便利です。私たちが泊まったバルコニーつきの部屋は広く、キッチンや洗濯機完備で長期滞在にも最適です。充実した朝食ブッフェは、一日のエネルギーをしっかり補給できます。きれいに整えられているプールやフィットネスセンターもあります。
広々としたスイートルームは明るく快適。まさに「家のような」居心地。
屋外プールに加え、サウナもあります。
Melia Chiang Mai
都会的な雰囲気を楽しみたいなら「メリア・チェンマイ」がおすすめ。22階建てのモダンでスタイリッシュなホテルで、洗練されたデザインとタイの伝統が融合しています。旧市街に近く、観光に便利なロケーション。エグゼクティブラウンジからは寺院や川など街を一望できます。高層階に泊まると、朝食は、広々としたメインダイニングの種類豊富なブッフェと、静かなラウンジの2箇所から選ぶことができます。
スタイリッシュなルーフトップバー
エッグベネディクトにクロワッサン、搾りたてのオレンジジュースや、タイ料理、フレッシュフルーツもお好みで!
エグゼクティブラウンジからの眺め
チェンマイでもアフタヌーンティーは人気
もちろん、屋外プールやキッズプール、24時間利用できるフィットネスセンターもあり、あらゆるタイプの旅行者に適した選択肢です。
サイクリング以外のチェンマイの魅力
オンタイ・ビレッジ
市内から車で少し走ると、オンタイビレッジがあります。ここでは、地域に根ざしたサステナブルな観光を体験できます。
私たちは、地域で採れるハーブを使ってタイマッサージに欠かせないハーブボールを作り、ハーバルマッサージも体験しました。また、地域内にある公園として整備されているホゥアイラーンダムの周囲を、サイクリングで楽しむこともできます。
ハーブの効能について説明を受けながら、乾燥させたオーガニックハーブを詰めてマッサージ用のボールを作ります。
フレッシュハーブを使ったフットマッサージは最高!
料理教室「Grandma’s Home Cooking」
旅先で気になるアクティビティの一つは料理教室。今回参加したクラスは、Farm to Tableをしっかり教えてくれるコースです。まず市場を訪れ、タイ料理に欠かせない食材や調味料について学びます(気になれば、その後のフリータイムでショッピングも可能)。それから彼らの施設へ移動し、スパイスを調合してカレーを一から作り、最後は作った料理を囲んでランチを楽しみました。
調理の前には、食材がどのように育つのかも自社農園で見学。
素晴らしい講師のおかげで、この料理もあっという間に作ることができました!
コーヒーもクラフトチョコレートも!
タイ北部は、コーヒー好きにとってまさに楽園。ローカルな屋台からミニマリスト系のロースターまで、カフェ文化がとても発達しています。今回の旅でのお気に入りは「オレンジコーヒー」。フルーティなコーヒーとオレンジジュースを組み合わせたドリンクで、爽やかでエネルギー補給にぴったりでした。
見た目も美しいオレンジコーヒー。多くのカフェで提供される定番メニュー
東京?サンフランシスコ?ミラノ? いいえ、ここはチェンマイ!
「Siamaya Chocolate(サイアマヤ チョコレート)」という、ビビッドなパッケージが印象的なチェンマイ発のビーントゥバーチョコレート工房も訪れました。ここでは、タイティーやトムヤム、ドリアンなどユニークなフレーバーチョコレートが作られています。工場見学とチョコレート作りのワークショップに参加し、地元のカカオ農家を支える持続可能な取り組みについて学ぶことができました。
2017年創業のスタートアップ、サイヤマヤ・チョコレートの共同創業者ニールさんが工房を案内してくれました
チョコレートも鮮度が大切。知識が加わるとさらに美味しく感じられます。
好きなトッピングを選んで、自分だけのチョコレートバーを作りました
レストラン:おすすめの名店
チェンマイはグルメの街。どこで食べてもほとんどハズレなかったのですが、特に印象的だった2軒を紹介します。
RASIK Local Kitchen(ラシック ローカルキッチン)
運良く予約が取れた「RASIK Local Kitchen」。結果的に旅のハイライトのひとつになったこの店は、シェフがゲストと交流しながら料理を振る舞うオープンキッチンのこぢんまりとしたレストラン。ミシュランガイドにも掲載される実力派です。
料理はスタッフに尋ねながら、旬の食材を使った限定メニューや、伝統的なタイ料理にひと工夫加えた創作料理を楽しみました。いずれもこれまでタイで食べた料理とは一線を画す品々で、クラフトビールやワインとの相性も抜群です。訪れる際は、ぜひその日のおすすめを聞いてみてください!
控えめな外観ながら、アットホームな雰囲気に吸い込まれてしまいます
活気あふれるオープンキッチン。
旬の食材を活かしたシンプルで洗練された料理。また来たい!
Kiti Panit
もう一軒は「Kiti Panit」。1888年創業の歴史ある建物を改装した、タイ北部料理の名店です。もともとは雑貨店だった建物を丁寧にリノベーションし、当時の木製家具や内装を活かした、クラシックな雰囲気が魅力です。
ディナーの後は、2階にある隠れ家のようなカクテルバー。看板もないため、知る人ぞ知るスポットです。洗練された空間で、チェンマイの”今”を感じながらオリジナルカクテルを楽しめます。
料理はどれも美味しくヘルシー。特に、タイ北部の名物「サイウア(スパイシーなハーブソーセージ)」や、レモングラス、ナッツなどの具を甘辛いタレと一緒にバイチャプルーという葉に包んで食べる一口サイズの伝統的スナック「ミアンカム」、甘味と酸味が絶妙なココナッツを使わない豚肉カレー「ハンレームー」など、すでに知っているタイ料理と異なるタイ北部の料理に、箸が止まりません!
入る前から、ワクワクさせられる店構え。
タイ北部の郷土料理が勢揃い。発酵茶葉のサラダなどあまり知られていない伝統料理も。
建物内は雰囲気も抜群。
ナイトマーケットとリラクゼーション
チェンマイのサタデーナイトマーケットは刺激的な体験です。圧倒的な規模でストリートフードや工芸品などの露店が所狭しと並び、ライブミュージックの演奏など活気に満ちています。遅い時間になるほど混雑するので、ゆっくり見たいなら早めに行こう。
チェンマイはマッサージ天国。カジュアルなタイプから、一軒家が丸ごとスパのタイプなど、多様な規模・タイプがあちこちにあります。サイクリングで緊張した身体を労るためにリラックス目的で訪れたのは「Oasis Spa Lanna(オアシス・スパ・ランナー)」。カップルも一緒に同じ部屋でスパサービスを受けられます。
実用的なアドバイスとおすすめ情報
ベストシーズン:11月~2月の乾季が最適。日中は28℃前後、夜は10℃程度まで下がり、サイクリングに最適な気候。日中は日差しが強いので日焼け止めは必須です。
ただし、2月後半〜4月は野焼きが行われるため、大気汚染が深刻です。訪れる前に現地の情報を調べましょう。
安全第一:必ずヘルメットを着用し、現地の交通ルールを確認して守りましょう。
水分補給:長距離ライドの際は、十分な水を持参すること。郊外は特に途中で買うことは簡単ではありません。
現地コミュニティ:地元のサイクリンググループと交流することで、穴場のルートや最新情報を知ることができます。
支払いは現金:チェンマイの都市部はクレジットカードの支払いができるところも多いのですが、地元の店や市場、郊外では宿泊も含めてほとんどが現地通貨での現金支払いです。
ATMは比較的どこにでもあるので、クレジットカードでの外貨キャッシングについて渡航前に把握しておくと安心です。
チェンマイは、サイクリストにとっても最高の目的地。次回はもっと長く滞在したいと思わせる、魅力的な旅でした!
タイ北部のサイクリング旅行は、期待以上に素晴らしい体験でした。美しい景色はもちろん、あたたかい人々と文化的な体験、そして冒険心をくすぐるチャレンジも。ここはサイクリングの経験を問わず、旅らしい旅を楽しめる場所です。
しかし!私たちのアドベンチャーはここで終わりではありません。この後、さらに奥地のナーン、プレー、ランパーンを巡る旅が続きます。続編もお楽しみに!