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八女の伝統と文化に触れる一泊二日の旅

内有数の高級茶の産地、八女。博多からは約1時間の距離にある人口6万人ほどのこの町は、和紙や提灯、久留米絣、仏壇などの多くの職人が暮らす九州最大の伝統工芸の集積地でもあり、最近ではクラフトに関心ある国内外の人々も注目する地域です。

Tea county Yame 茶どころ八女の職人が多く暮らす地域、八女福島の許斐本家

福岡からは日帰りでも楽しめる訪問先としても人気の八女ですが、今回は”お出かけ”でなく『旅』を堪能するために、”泊まりがけ”で行ってきます!

出発は、天神の西鉄福岡駅。
西鉄天神大牟田線の沿線・筑後地方を楽しむことがコンセプトの旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」に乗って、地域の食材でつくるランチを楽しみながら目的地へ向かいます。

THE RAIL KITCHEN CHIKUGO 西鉄レールキッチンの車窓とデザート

車窓から眺めが、街中のビル群から、住宅街、田園風景へと変わるに従い、旅気分が高まります。

あまおういちごのスパークリングワインで始まり、前菜、スープ、博多和牛と続く筑後の食材尽くしのランチコースの締めは、車内の釜で焼くピザ。この日は香り高くて柔らかい新牛蒡とほうれん草にモッツァレラチーズをのせたピザ。

THE RAIL KITCHEN CHIKUGO 西鉄レールキッチンの窯焼きピザ

ランチと車窓からの景色を楽しみながら過ごす約2時間の列車の旅で、すっかり気分は旅モード。柳川駅で下車し、柳川の冬の風物詩「こたつ舟」でのお堀巡りです。

Winter Yanagawa canal punting 冬の柳川名物、こたつ舟でお堀巡り

冬場は、火鉢を入れたこたつを乗せたどんこ舟で、市内を走る水路「堀割」を船頭さんのガイドで巡ります。静かな町中の冷たく澄んだ空気が、ランチで満たされ熱った身体を、ほどよく冷ましてくれます。

風情豊かな景色を楽しんだら、お茶どころ八女へ向かいましょう。
八女は、お茶の最高級品「玉露」の名産地。全国茶品評会の「玉露の部」で21年連続(!!)産地賞を受賞しています。

Yame tea farm 八女中央大茶園の茶畑

ゆるやかな傾斜の丘陵地に約70haの茶畑を有する八女中央大茶園の展望所からは、眼下に広がる一面の茶畑を望むことができます。電柱のような大きな換気扇は、霜で茶葉に被害が及ばないよう設置されている防霜ファン。暖かい空気を下方向へ送る役割で、茶畑の随所でみることができます。

そこから、山間部に向かうと「奥八女」と呼ばれる自然に包まれるエリアに入ります。今宵の宿は、雄大な山々に囲まれ、矢部川沿いに位置する平屋造りの離れの宿「奥八女別邸やべのもり」。

Okuyame hotel Yabenomori 奧八女別邸やべのもりは全室離れ

清潔で設備も新しい(2018年オープン)ゆったりした室内で、リラックスして過ごすことができます。

Yabenomori Yame hotel 八女の宿、やべのもり「三国山」のゆっくりした室内

夕食は、地元の食材をつかった会席です。山菜やヤマメ、地元の棚田で育ったお米など、豊かな自然に育まれた力強い食材の味を楽しめます。

Japanese style Dinner at Yabenomori in Yame 奧八女の離れの宿「やべのもり」で会席スタイルの夕食

朝食は、矢部川沿いのお部屋で棚田米をメインに、豆腐や葉わさびの粕漬け、切り干し大根など郷土料理が添えられた和定食を。

Japanese Style Breakfast in Yame 八女の離れ「やべのもり」で棚田米の朝定食

この宿でもっとゆっくりしたいなぁ、と後ろ髪引かれる思いでチェックアウトして、さらに山の上にある茶畑に向かいます。

奥八女別邸やべのもり
福岡県八女市矢部村矢部3343
https://hpdsp.jp/yabenomori/

ここは福岡県八女市矢部村の標高600mの山の中にある茶畑。小雪舞う寒さなど気にならないほどの絶景です!

Yame tea field in the mountain 標高600m奧八女の茶畑で有機栽培される八女茶

この辺りは、冬は雪に覆われるほど冷え込みますが、夏でも涼しく害虫が少ない特徴を活かし、家族でお茶作りを営む「千代乃園」がお茶の有機栽培を行っています。

そして、お昼はこの千代乃園が営む『茶寮 千代乃園』にて。

Cold brew Yame tea at Chiyonoen 茶寮 千代乃園で楽しむ八女茶の氷出し

大切に育てたお茶を美味しい飲み方で楽しんでもらいたい、失われつつある奧八女に伝わる食文化に触れてもらいたい、そんな思いで2019年にオープンしたカフェです。

Yame tea farm cafe Chiyonoen 八女茶 茶寮千代乃園のランチ

奧八女で育った山菜や野菜、棚田米を使って手作りされるやさしい味わいの品々に、オーガニック栽培のお茶が添えられます。デザートに、お茶をつかった手作りのスイーツをお忘れなく!(煎茶、抹茶、和紅茶、ほうじ茶の寒天を使ったオリジナルのみつまめはおすすめ!)

茶寮 千代乃園
福岡県八女市黒木町北大淵6338
https://www.instagram.com/saryouchiyonoen/

Yame tea farm cafe Chiyonoen 八女茶 茶寮千代乃園

そもそも、お茶は古くから日本各地で栽培されていたと言われていますが、お茶の効能を知らせて茶の栽培を推奨したのは、中国から茶種を持ち帰った栄西禅師。「茶は養生の仙薬なり…」ではじまる『喫茶養生記』を1211年に著し、それまでは一部の上流社会だけに限られていた喫茶を、一般社会に広めた人として知られています。

八女茶の歴史は、1423年に周瑞禅師(しゅうずいぜんし)が霊巌寺(福岡県八女市黒木町笠原9731)を建立し、地元の庄屋に茶の種子を与えて、釜炒り茶の栽培・製造・喫茶法を伝えたことから、霊巌寺が八女茶発祥の地と伝えられています。

Entrance to Reigan-ji Temple, the birthplace of Yame tea 八女茶発祥の地、霊巌寺の入口

Reigan-ji Temple, the birthplace of Yame tea 八女茶発祥の地、霊巌寺

古くから一般的だったのは、茶葉をヤカンの湯で煮出すことによって成分を抽出する煎じ茶で、現在の急須で煎茶を淹れるというスタイルが一般に広まったのは、江戸時代後期あたりだとか。

今回は、八女の玉露を楽しむユニークな飲み方も体験しました。

Yame tea ZENSHI CHA 八女茶の多様な楽しみ方、zenshi茶体験

茶葉に少量のお湯を注ぎ、上澄を注ぐように器に移して味わいます。温度が異なるお湯を数回注ぎ、味わいの違いを楽しんだ後は、醤油や塩などシンプルな調味料を添えて茶葉をいただきます。

奥八女焚火の森キャンプフィールド(八女茶カフェ)
福岡県八女市黒木町笠原9512番地

Okuyame Takibi no Mori Campfield 奥八女焚火の森キャンプフィールドの八女茶カフェ

また、職人のまち八女福島では、八女が誇る伝統工芸「八女福島仏壇」の技に触れられる、箸つくりができます。

Yame Fukushima 職人のまち、八女福島 - 白壁のまち並み

豪華なつくりで知られる八女福島仏壇の装飾技術「螺鈿(らでん)」を生かした「マイ箸づくり」は、あわび貝や卵殻を漆で塗り重ねた木の箸を、研いで磨いて柄を出す伝統技の体験です。表面の漆を少しずつ研ぎ落としていくことで、幾重にも塗り重ねた漆や、漆の下に埋め込んだ箔や貝などの紋様を削り出すのですが、磨きすぎると木材が露出したり、磨きが足りないと紋様が出なかったり、艶が足りなかったり…。若い職人さんに教えてもらいながら、ついつい夢中になってしまいます。

八女福島の緒方仏壇店で螺鈿 マイ箸つくり体験

仏壇の職人技を体験「マイ箸」づくり
緒方仏壇本店
福岡県八女市本町397-3

伝統工芸品をもっと見たい!特産品を買いたい!というリクエストに応えてくれる施設もあります。八女地方の伝統工芸品を一堂に集めた八女伝統工芸館は、見学やショッピング、和紙づくりなどの体験もできます。同じ敷地内にある観光物産館では、八女茶をはじめ、地酒や銘菓、農産加工品等が揃っています。

観光物産館の中に出店する「郷土食の店 ふくちゃん」のふくよさん。だご汁やよもぎ饅頭など、奧八女のおふくろの味はいつも人気。

Yame populer cafe Fuku chan 八女の観光物産館 だご汁と饅頭ふくちゃん

八女伝統工芸館 / 観光物産館
福岡県八女市本町2-123
https://yamedentoukougeikan.jimdo.com/

Category
Travel
Yame
Published: Feb 4, 2022 / Last Updated: Feb 8, 2022

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