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2005年福岡県西方沖地震 あれから一年

の名前はアラシ・ガンドミ、九州大学の大学院で地震学を研究して2年半になる。母国イランでも日本でも地震を経験済みだ。日本の地震に関する研究は進んでいるから、ここで研究できて嬉しいよ。

××3月20日午前10時53分 ××
警固断層は市の中心部を通っている上、100年以上に及び大規模な地震の記録がなかった福岡において、地震対策は万全か?という疑問に答えるのは難しい。しかし去年3月20日、親切にもその答えが出された。それは日曜日の午前11時頃、僕はまだ眠っていた。突然テレビや棚が揺れだし、一瞬夢か?と思ったけれど、揺れが強くなっていくにつれて、この正体が、大きな地震のときに最初に感じられる弱い揺れだったのだと悟った。通常、その数秒後には強い揺れがやって来る。この数秒間は大きな揺れに備えるラストチャンスといえるだろう。実際いくつかの建物は最初の弱い揺れの直後に警報が出されるしくみになっている。
×× 震源地、警固断層?!××

3月の地震の震源は福岡の西方沖30キロ、玄界灘に浮かぶ玄界島の付近だとわかった。気象庁が発表した震源地のマグニチュードは7.0。地震を引き起こしたとされる断層は、九州大学の地震火山観測研究センターによる余震の解析で見つかった。この断層はちょうど警固断層を海側に延ばした場所にあるように見える。これが、福岡の地震対策についての疑問に「親切にも答えが出された」と言った理由である。地震学者にとってこの地震は、もし警固断層で地震が起こったらどんなにひどい被害が出るのかを予測する、良い研究材料となったのだ。警固断層で将来、地震が起きないという保障はどこにもない。

×× 地震の被害は…××

この地震で福岡県では1人が亡くなり、50人ほどが重症、数百人が軽症を負い、およそ300ほどの建物がダメージを受けた。特に玄界島の被害は大きく、127棟が崩れ落ち、ほか50棟ほどが損傷した。福岡市内でも大名や今泉の古い建物は損傷し、支払われた保険金の総額は158億円に及ぶと言われている。天神の街も強い揺れに襲われ、ビルの窓ガラスが割れて散らばった。古いお寺や神社の損傷もひどかった。同じ九州大学で地震学を研究している豊国源知は神社の石灯篭や鳥居の被害を調査した。結果、志賀島の志賀海神社では18基すべての灯篭が、箱崎宮でも全体の7割の47基が倒壊していることがわかった。これは地震の時にお寺や神社にいると如何に危険かを物語っている。あなたが参詣している最中に地震が起こった時は、鳥居や灯篭のそばには決して近寄ってはいけない。
×× 福岡の“安全神話”崩壊 ××
1995年の阪神・淡路大震災では6500人が亡くなったことを思うと、今回、被害の少なかった福岡は実に幸運だったと言えるかもしれない。去年の福岡の地震と同じ震度で、2003年、イランはなんと3万人の死者を出してしまったのだから。

大地震にはつきものの「余震」。今回の福岡でも主震の後、震源地を中心に余震が続いた。その数は時間が経つにつれ次第に少なくなるが、地震の規模が大きいほど、余震の数や規模も大きくなる。大規模な地震の後には1時間以内に余震が数回、僕の経験から言うと、去年の福岡の場合は地震の1週間後もまだまだ余震が続き、予断を許さない状況だったと言える。そしてちょうど1ヶ月後の4月末、マグチュード6の、余震というには大きすぎる揺れが観測されたのだった。大地震の前には前震が起こる事も多いが、福岡で起きた地震の場合には目立った前震はなかった。一方でイラン大地震では前震が前夜に観測されてはいたにも関わらず、地震対策ネットワークの欠如により公表されずに終わっていたのだ。

僕が地震を研究していると言うと大抵の人は「地震を予測するって可能なの?」と聞いてくる。これが実現できれば素晴らしい事だ。もちろん、地震予測の研究をしている学校や研究室は多くあるのだが、たいていの地震の研究ではいつ地震が起きるのかではなく、地震による地面の揺れや動きに注目している。いつ地震が起こるか、よりもどのくらいの威力で地震が起こるか、その為には建物の強度をどこまであげなければならないのかが判っていれば、大きな被害を防ぐことも可能だ。

日本が地震の多い”環太平洋火山帯”に位置していることは皆さんご存知のはずだ。特に地震の多いエリアとして東・南アジア、インドネシアと共に名を連ねている。その他、中国の南西部、北インド、パキスタン、トルコ、イランなど。もともと防災の意識の高い先進国の日本でさえも地震の被害は多く犠牲者を出しているのだから、どこにいても地震の危険性を把握しておくべき。また被害の特にひどい発展途上の国々にその情報を提供すべきだと思う。

×× 知っておくべき事 ××

では実際に地震に備える為にはどうしたらよいのか!?僕のオススメする対策はこちら。
● タンスやテレビ、また壁に掛けた装飾品などを固定する事。(100円ショップが大活躍だね)
● 重さのある物は低い位置に置くといい。
● 机の下は常に片付けておく事。ちょっとばかり贅沢をしても、丈夫なものを選ぼう!
● 窓ガラスが割れた時に備え、ベッドは窓から遠ざけておく。
● 前震が起きたら、主震に備える。

地震がおきても慌てないことが大切だ。寝ている時に地震がおきたら、布団をかぶったり、机やベッドに下に避難することだ。そしてここが肝心!決して階段を使わないこと、地震が起きると階段は危険極まりない空間へと変貌するからだ。運転中に地震を感じることは難しいが、地震に気づいたらガード下や橋の上は避け、安全な場所に駐車し車の中で地震が終わるのを待とう。4万人の死者を出した1990年のイラン地震でとある少年が助かったのは「布団をかぶったから」。ものが体に落ちてきたり、突き刺さったりする事による死傷者が多いのが地震だ。したがって布団をかぶるという単純な行為も、希望の光だと言えるだろう。
×× 学ぶことは楽しいこと××
ちびっこ用の施設?!などと軽んずるなかれ!ここ「福岡市民防災センター」ではいろいろな模擬体験を通して、もしもの時の防災の知識や対処法が学べる施設なのだ。災害から身を守るには一人一人の防災意識を高めることが必要。地震体験(震度1~7)や消火訓練、強風体験(風速30m)やクイズを通して楽しみながら防災の知識に触れる事ができる。また、同センターでは福岡市内の幼稚園、学校、町内会などのグループを対象に防災講座も行っている(無料/要予約)。
×× 地震トリピア ××
■世界では日々地震が1分間に2度起きている。
■観測史上最大の地震は1960年にチリで起きた。マグニチュード9.5を記録し、6千人以上の尊い命が奪われた。地震による津波はハワイや日本にも押し寄せたほど。
■世界初の地震計は西暦132年、中国の哲学者によって発明された。棒が倒れて地震の発生と方位を知らせる装置で、600キロ先の揺れまで観測することができた。
■地震の破壊力は絶大だ。マグニチュード4の地震はTNT1000トンまたは小さな核兵器、そしてマグニチュード9の地震はTNT32兆トンに相当するエネルギーを持っている。
×× 自然にまつわる神話 ××
世界の不思議は自然の摂理。人間だってそうなのです!てことでどんな理屈だって成り立たない時もある。各国の神話もアンビリーバボー?

■日本
ナマズが暴れると地震が起こる、と昔から言われている。鹿島大明神が大きな岩でナマズを押さえこんでいる…らしい。
■ シベリア
カムチャッカではソリを引く犬達にはノミがいて、犬が体を掻くのをやめたら地震が起こると言われている。
■ アメリカ
地球を背負っているのは実は亀!時々喧嘩をしてしまう彼らは別々方向へ泳ぎだす。これが地震を引き起こす原因、というのだが…。
■ ペルー
神様が国民を数える為に地上に降り、その足音が地震を引き起こすと言われてる。

Originally published in Fukuoka Now magazine (fn87 Mar. 2006)

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Fukuoka City
Published: Mar 1, 2006 / Last Updated: Jun 13, 2017

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