目覚めに、食後に、仕事中に…。日本では当たり前に飲まれているお茶をどのようなタイミングで口にしているだろうか。今回は「地球の色=緑茶」ともいわれる日本が誇る食文化、国民飲料「お茶」に注目しよう。 中国から博多、そして全国へ 一言で「お茶」といっても、製法の違いにより緑茶(日本茶)と烏龍茶、紅茶に分けられ、抽出方法はもちろん、味や風味、色など、それぞれの楽しみ方は多種多彩。例えば日本茶の場合、大きくリーフ状の煎茶と粉末状の抹茶に分けられ、栽培法や製法から煎茶、番茶、玉露など、いくつかの種類に分けられる。茶の原産地は中国雲南省とされ、始めて日本に持ち込まれたのは奈良時代から平安時代。その後1192年、栄西が中国から持ち帰った種子を筑前背振山に蒔き、さらに博多にある禅寺・聖福寺に移植。福岡での栽培をきっかけに、その後全国へと広まり、国民飲料として定着していったのだという。 高級・八女茶のすすめ 現在、日本では宇治茶や静岡茶など、各地で茶の栽培が行わ、九州でも八女茶や嬉野茶、知覧茶など、代表的な名産地がいくつか挙げられる。寒暖の差がはげしいエリアで栽培され、福岡県でいえば、八女茶がお馴染みだ。矢部川、星野川流域に広がる茶畑は、国内における玉露生産の半分をカバーする生産量日本一のエリア。煎茶、玉露ともに味の、苦みと渋みが少なく、濃厚な風味が広がる高級茶の産地として広く認知されている茶の名産地だ。さらに4月下旬~5月上旬(八十八夜の頃)は、各地で新茶が摘み取られ、鮮やかで香しい茶の風味に、多くの日本人が初夏の訪れを感じるのもこの時期だ。 国民飲料・日本茶を楽しむ 長い歴史を経て、今や日本文化を代表する食品となったお茶。それぞれ葉に特徴があり、ベストな湯の温度や急須の大きさ、飲むタイミングなど、すべてを完璧に整えると、お茶独特の香しい風味を存分に楽しむことができることをご存知だろうか。 抹茶ほど肩肘張る必要はないが、何気なく入れる緑茶を少しだけ丁寧に入れてみるだけで、きっとお茶の味、再発見!といった感動に出会えるはずだ。世界には紅茶やコーヒー、ココアなどさまざまなティータイムがあるが、ここはひとつ、日本のティータイム「緑茶」をゆったりとお茶の時間を楽しんでみてはいかがだろう。 お茶は栽培方法や加工の仕方によって味や風味、色合いなどが異なり、さまざまな種類に分けられる。 玉露 日本茶の中で最も高級とされる逸品。直射日光を遮って栽培した新芽は、渋みがなく、まろやかな甘みが広がる。 上級煎茶 煎茶の中でも特に上質とされ、春先に摘まれた茶葉は香り高くすっきりとした味が特徴的。 番茶 たっぷりと日光を浴びた夏頃に収穫される煎茶の下級品。甘みが少なく、さっぱりとたんぱくな味が特徴的。 玄米茶 煎茶や番茶に炒った玄米を混ぜたもの。餅米やウルチ米が使われ、混合の比率によって異なる風味が楽しめる。 ほうじ茶 煎茶や番茶を高温で炒った独特の香ばしさが特徴的。カフェインが少なく、まろやかな味は子どもにもおすすめ。 粉茶 煎茶や玉露の製造過程で出る粉末を集めたもの。寿司屋で出されるあがりは 粉茶の場合が多い。 茎茶 煎茶を作る過程で出る茎を集めたお茶。玉露の茎茶は雁音(かりがね)とよばれ、珍重される。 抹茶 玉露同様、新芽に覆いをかけて栽培し、蒸した後そのまま乾燥。茎を取り除き、石臼で微粉末にしたもの。いき、 茶葉にはそれぞれのおいしさを引き出すために、最適な温度や蒸らし時間などがあるが、難しいことは抜きにして、湯温が高いほど茶の香りが引き立ち、ぬるめにじっくり淹れると高級茶の甘みが引き立つという基本を押さえよう。香りが命の「新茶」の場合、やや高めの湯温、短い抽出時間がポイントだ。 1 まずは沸騰した湯を急須に入れ、温度を落ち着かせる。急須を温める効果もあり。 2 その後、急須のお湯を湯のみに注ぎ、適温80度まで湯を冷ます。同時に湯のみも暖まる。 3 暖まった急須に5g~6gの茶葉を入れる。2杯ならば5g~6gを目安に。写真は2杯分。 4 先ほど湯のみで冷ましておいた湯を急須に注ぐ。40~50秒かけてゆっくりと茶葉をふくらませ、茶成分を抽出。 5 最後はお茶を均等に廻し注ぎし、最後の一滴まで絞りきる。2煎目が美味しくなるポイントだ。 ※2杯目は渋みが出るので、お湯を入れたら待ち時間は短く、手早くさっとと注ぎ分ける。 ■水へのこだわり どんなに美味しい茶葉も、使う水によって味や風味が変わってくる。よりおいしく淹れるためには、市販のミネラルウォーター(硬水ではなく、軟水)や、一度沸騰させてカルキ抜きした水道水がおすすめ。水を使い比べてお気に入りをみつけよう。 ■正しいお茶の保存法 お茶は温度や光線に影響を受けやすいため、保管は冷暗所が適当。また臭いが付きやすいので密封容器での保存がおすすめ。 <> 美味しい日本茶を入れるための道具を紹介! 急須 湯をさして、お茶を煎じる時に使う取ってのついた器。煎茶、玉露は小さな器、番茶は大きな器で。 茶筒 茶葉を保存する容器。円柱状の筒で、大きさや柄はさまざまで、器と同様、そのセレクトは個人のセンスが光る。 茶さじ 好みの茶葉を茶筒からすくい取る道具。竹やステンレス、木製など素材はさまざま。 もともとお茶はツバキ科の常緑低木。製法の違いから発酵させると紅茶、半発酵では烏龍茶、発酵させないのが緑茶とに大別される。茶葉は摘み取られるとすぐに発酵し、酸化が進むが、発酵させない緑茶の場合は、カテキン類やカロチン、ビタミンなどの栄養素が壊れることなく、抽出される。以下、飲んで健康! 納得のお茶パワー。 1 虫歯、口臭を防ぐ カテキンの効果により、虫歯菌の増殖を抑え、口の中をすっきりさせる。食後のお茶は効果的。 2 眠気や酔いさましに カフェインにより覚醒効果が現れ、頭がすっきりさえる。特に高い温度の湯で入れたお茶は効果的。 3 体脂肪を効果的に燃やす 脂肪の代謝を促進させるカフェイン。緑茶を飲んで運動すると体脂肪の燃焼をアップさせる。 4 美肌効果 肌の弾力を保ち、ビタミンCが毛細血管を強化。肌の保湿性を高めるのだ。 5 動脈硬化、高血圧予防 血中コレステロールを減少。血圧上昇を抑える効果あり。 6 風邪を防ぐ 殺菌作用が強いため、緑茶でうがいをするとウイルス侵入が抑えられる。 7 老化を防ぐ 強い抗菌力のおかげで、体内酸化を抑え、pHのバランスを調整。体内のアルカリ性化に働きかける。 8 食中毒予防 カテキンにより、食中毒菌を強力に殺菌。整腸作用にも効果あり。まさに、寿司とお茶のセットは先人の知恵だ。 一般的にお茶は、4月下旬頃に摘み取られる新茶を1番茶といい、その後は時期を追うごとに2番茶、3番茶とよばれ広く「番茶」とよばれるお茶へ味を変える。このように年間を通じて栽培され、消費されるお茶だが、飲むだけでなく、最後の一滴、出がらしまでが茶パワーを発揮することをご存知だろうか。最後は飲むだけじゃないお茶の楽しみ方をご提案。 鮮やか! お茶風呂に浸かる 木綿の布に茶葉を入れて浴槽へ。豊富なビタミンCが肌荒れを治し、つやつやと弾力のある肌つやが復活。体も芯から温まる。 出がらしでつるつる白肌 洗顔後、出がらしを入れた水で顔をパッティング。ビタミンCの効果で、メラニン色素の沈着を防止し、シミやソバカスの発生を防ぐ作用あり。 おばあちゃんの知恵。掃除のおともに… 茶の出がらしを畳にまいて掃くと、畳の目の汚れまですっきりとれる。 さび防止に一役 鉄鍋や鉄瓶などを出がらしで拭くとタンニンが膜となりさびを防止する。 臭くな~い!冷蔵庫の消臭に 乾燥させた出がらしを置くだけで気になる臭いを吸い取ってくれる。 気になるまな板の臭いには 出がらしにお湯を注ぎ、まな板にかけると抗菌、消臭効果がある。 ゆったり茶香炉を楽しむ 茶葉を温め、香りを楽しむ茶香炉。消臭作用と爽やかな茶の香りがリラックス効果を高める。 福岡市内には老舗のお茶屋さんから新しいカフェスタイルのお店まで、お茶関連のお店が点在。甘くて渋い、お茶独特の香りに誘われてのぞいてみては? 日本茶カフェお茶の樹 /緑茶でちょっとひと休み…。 市内で珍しい日本茶専門店。煎茶や玉露、抹茶など、好みに合わせて7種類の中から選ぶことができ、お茶うけの付いたセットで楽しむことができる。 住所>>福岡市中央区大名2-10-1シャンボール大名A-111 電話番号>>092-711-9235 営業時間>>10:30~20:00 定休日>>日祝 野中の八女茶 /各地の銘茶、茶道具がずらり。 上川端商店街内、店主が認めた選りすぐりの緑茶が揃う八女茶専門店。急須や茶筒、湯のみなどの茶道具も充実。お土産探しにもぴったりだ。 住所>> 福岡市博多区上川端町11-283 電話番号>>092-271-0452 営業時間>>9:30~19:00(日祝10:00~19:00) 定休日>>第1・第3日曜
Originally published in Fukuoka Now magazine (fn77 May 2005)