新しく生まれ変わった明治公園について、前回の記事では、立体的な園路やテラス、ベンチ、そしてパンやコーヒー、クラフトビール、ピザ、都市型スパまで、このコンパクトな公園で実際に楽しめるものを紹介しました。
今回は、もう一歩奥へ、明治公園をつくった人たちの考え方に目を向けます。

オープニングセレモニーの場で、Fukuoka Nowは、この公園の総合デザイン監修を務めた建築家・藤本壮介さんと話す機会に恵まれました。公園を背に話す姿も、公園に開かれたベーカリーの中で話す姿も、気さくで、思慮深く、どこか遊び心がある。それは、この公園そのものの印象にも似ています。

明治公園は、ただ眺めるためにつくられた場所ではありません。歩き、座り、食べ、誰かと会い、思い思いに過ごすための場所です。テラス、階段、園路、ショップ、そして随所に配された緑。それらが重なり合いながら「都市の小さな一角を、どうすればもっと心地よく人と共有できるだろう」と、問いかけているように感じられます。
オープニングセレモニーとその後のトークセッションでは、高島宗一郎福岡市長、藤本壮介さん、東京建物のプロジェクト関係者が登壇。変化を続ける博多の中で公共空間が果たす役割や、公園を「つくって終わり」にしないための考えが語られました。
なぜこの場所なのか
明治公園があるのは、博多駅周辺で進む「博多コネクティッド」の中心エリア。耐震性や機能性を高めた新しいビルへの建替えが進み、街の姿が大きく変わろうとしています。
高島市長は、その都市更新と、人が心地よく感じられる場所との関係についてこう話しました。
「博多駅周辺では、高度で耐震性の高い建物へと次々に生まれ変わっています。そのビル群の中で明治公園に入ると、曲線があり、緑がある。まるで別世界に来たような空間が広がっています」

今回の公園づくりには、民間事業者が公園内に収益施設を設置・運営し、その力を公園の整備や維持管理にも生かす「Park-PFI」の仕組みが採用されています。高島市長が強調したのは、単なる財政効率ではなく、公共空間を持続的によりよくしていくための方法としての可能性です。
「これまでは、公園は行政がつくり、行政が管理するという考え方が一般的でした。Park-PFIでは、民間のアイデアやノウハウを生かすことができる。カフェなどから生まれる収益を、公園の入口や植栽、空間全体の魅力向上につなげることもできます」
市民、民間事業者、行政の三者にメリットがある仕組み。トークセッションではさらに「これからの公園には、仕組みも、メンテナンスも、もっと工夫が必要。知恵を使いながら、持続可能な形をつくることが大切」と語りました。
プロジェクトの公式コンセプトは、The Gateway Park “HAKATA MEIJI”。発表資料によると、都心部に約1,400㎡の緑地をつくり、約160本の樹木・植物を配置。特徴の異なる5つの広場や庭と、テナント棟の屋外階段につながる全長226mの立体園路が設けられています。
藤本壮介が考えた「公園+建築」
藤本さんが最初に注目したのは、この場所そのものの特殊性でした。九州最大級の交通拠点である博多駅のすぐ近く、建物に囲まれたコンパクトな敷地です。
「初めてここに来たとき、この場所には可能性があると感じました。建物に囲まれているからこそ、都市の中庭のように、豊かな緑と人の活動が生き生きとする場所にできるのではないかと思いました」

一方で、「ただ平らな公園をつくるだけでは、少しもったいない」とも感じたといいます。
「これだけ一等地にあるスペースなので、立体的にすることで、どこにもない新しい都市公園がつくれるのではないかと思いました」
そこから生まれたのが、この公園を特徴づける立体園路です。地上からテラス、店舗、上部へとつながり、小さな敷地の中を回遊しながら、高さの異なる場所から街や緑を見ることができます。
実は藤本さん自身、以前から公園をつくりたいと考えていたそうです。
「建物も大切ですが、建物だけだと、人の生活や活動の場所として少し足りないように感じるんです。道があり、広場があり、オープンスペースがあることで、人の活動はもっと豊かになります」
明治公園について藤本さんが使った言葉が、「公園と建築が合わさったようなもの」。公園の横に建物を置くのではなく、両者を溶け合わせることが狙いでした。
「公園と建物を分けて考えていません。立体園路によって公園が少し建築的になり、建物の周囲を園路が包み、屋上にはテラスや緑がある。公園と建築が融合した先に、新しい未来の形が生まれるのではないかと、すごくわくわくしながら設計しました」
実際に歩いてみると、これまでなかった高さから博多の街を見ることができます。若い木々の間を歩き、緑を上から眺め、進むたびに視界が変わる。限られた敷地を、ひと続きの風景として体験できるのが、この公園の面白さです。
密度の高い都市に必要な緑
トークセッションで何度も登場したテーマが「緑」でした。それは装飾としての緑ではなく、これからの都市に欠かせないものとして語られました。

高島市長の言葉はとてもストレートです。
「これからは、緑が勝つんです」
都市が合理的になり、効率が上がり、テクノロジーが進むほど、人には生きたものに触れる時間が必要になるといいます。
「私たち人間も生き物です。ビジネスが効率よくできて、安全な建物がある合理的な都市だからこそ、今、緑や花、アートが大切なんです。それによって、人間らしい感覚をもつことができます」
藤本さんも、より広い都市の視点から同じテーマに触れました。
「海外の都市と比べて、日本は公園や緑が少ないと言われます。でも日本は、植物がよく育つ気候がある。個人的には、都市は森になっていけばいいと思っています」
例に挙げたのは、道路や硬い舗装を見直しながら、歴史ある都市に緑を増やしているパリ。福岡にも、都心に緑を取り戻す都市のモデルになれる可能性があると話します。
「まず明治公園から緑が広がって、いろいろな場所で公園が更新されていけば、福岡という街のイメージそのものが変わっていくと思います」
開業したばかりの明治公園では、植物はまだ若く、これから育っていく途中です。時間とともに緑が厚みを増し、より柔らかく、立体的な風景になっていく。その変化も、この公園の一部です。
人が「集まる」だけでなく、「混ざる」場所へ
トークセッションの中で特に印象的だったのが、高島市長が語った、人と人との偶然の接点についてでした。オフィスビルが集まる都市では、近くで働いているからといって人が自然に交流するわけではありません。
だからこそ、明治公園には小さな交流が生まれる「きっかけ」が必要だといいます。その例として挙げたのが、サウナのロウリュでした。「ロウリュは、誰かがお湯をかけなければいけないですよね。石がちょうどいい状態のときに誰かがかけるかもしれないし、少し早くかける人がいるかもしれない。そういうところに、人間的な“ゆらぎ”が生まれるんです」

この公園は施設の集合体であるだけではありません。「いいですか」と声をかけること、ベンチを分け合うこと、外でパンを食べること、仕事帰りに誰かと会うこと、サウナの後に少し立ち寄ること。そうした小さな場面を生み出す場所でもあります。
「コミュニケーションを生む仕掛けが、ここにはあります。ここでランチをしたり、時間を過ごしたり。ただ人が集まるだけではなく、“混ざる”。そういう仕組みを都市につくることには、大きな価値があると思います」
また、市長の言葉は、再開発の感情的な側面にも触れていました。
博多のビルが新しく、高く、大きくなっていく中で、時に近寄りがたく感じられることもあります。しかし市長は、明治公園の周辺にあった地元からの歓迎の雰囲気に心を動かされたと話しました。
「博多コネクティッドでビルがどんどん新しくなり、高くなっていく。でもそれが怖いものではなく、人の気配や暮らしが残っているのはいいことだと思います」
デベロッパーが考える「体験価値」
東京建物からプロジェクト代表として登壇した神保武さんが繰り返したキーワードは「体験価値」でした。東京建物は、東京都立明治公園をはじめ、ほかの公園プロジェクトにも携わっています。その経験を通して、公園を見る目そのものが変わったと話します。

「公園って、こんなに大事なんだと実感しました。いろいろな活動があると、いろいろな人が来る。そこから新しいコミュニティができて、場所がまた賑わっていくんです」。セレモニーでも神保さんは、建物や施設をつくって終わりではないと強調しました。
パンとコーヒー、ピザとクラフトビール、サウナと食事、テラスとテイクアウト。店舗は個別に選ぶのではなく、公園でどう時間を過ごしてもらうかという体験全体から考えられました。
「建物や施設をつくって終わりだとは思っていません。これからの管理運営を通して、この公園を育てていくことが大事だと思っています」
公園は、オープンしてからが始まり
トークセッションの終盤、三者の言葉はひとつの考えに重なっていきました。
開業は、完成ではない。

藤本さんはこう話します。
「建築も公園も、ものが完成したときは、まだスタート地点なんです。人が来て、交流が生まれて、コミュニティができて、人が集まり、混ざる。そこで初めて、その場所が本当に生き始めます」
明治公園では、それぞれの店舗がテラスや公園へと直接つながっています。
「どの店舗から出ても、大きなテラスがあって、その先が公園につながっています。サウナから出ても、そのまま公園につながっているように感じられる。それは、この場所の大きな価値だと思います」
神保さんも、締めは同じ考えを語りました。
「完成した今でも、まだ半分です。ここから公園に魂を入れていかなければいけない。地域の方々に愛され、自然に使ってもらうことで、初めて育っていくと思います」
高島市長も、「公園は人がいるからこそ公園になる」と話しました。
「ここから、新しい公園の使い方が生まれていくかもしれません。これからの時代、人が混ざる場所は、ますます重要になると思います」
街の真ん中で少し足を止める。景色を見る。パンを食べる。ひと休みする。誰かと会う。あるいは、知らない誰かと言葉を交わす。そんな日常の積み重ねによって、つくられたばかりの公園が少しずつ「自分たちの場所」になっていく。
明治公園の本当の姿が見えてくるのは、きっとこれからです。