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柔らかく深みのある音色の筑前琵琶

本で琵琶として知られる楽器の原型は、古代ペルシャで生まれたと考えられています。アラブ文化圏では現在でも琵琶に良く似たウードという楽器が演奏されていますし、ヨーロッパに伝わって発展したのがリュート、そしてシルクロードから中国を経て日本へ伝わったのが琵琶です。琵琶が日本へ伝わったのは7~8世紀頃とされ、奈良・正倉院の宝物にも当時の琵琶が残されています。

もともと経文の伴奏をする楽器としての役割があった琵琶は、日本では盲人の僧侶が琵琶を奏でながら経文を唱える「盲僧琵琶」として各地に伝わっていきます。盲僧琵琶はとりわけ九州で盛んとなり、薩摩や筑前で宗教音楽や娯楽としての琵琶が広まりました。筑前盲僧琵琶の開祖とされるのが玄清法印という僧侶で、南区高宮の成就院はこの玄清法印が開いた寺とされています。

琵琶にはいくつかの種類があり、楽器も演奏法も少しずつ違います。現在に伝わる筑前琵琶は明治時代中期に誕生しました。琵琶奏者の一丸智定(後の初代・橘旭翁)が、三味線などの特徴や演奏法を取り入れて新しく作り出したものです。筑前琵琶は楽器も小ぶりで軽く、柔らかく深みのある音色だったことから、全国的に流行して女性たちの習い事として広く人気を博しました。

現在、筑前琵琶を製作・修理できる職人はわずかしかいません。そのひとりはイタリア生まれのドリアーノ・スリスさん。イタリア文化を紹介するイタリア会館・福岡を主宰しながら、45年前から筑前琵琶職人として活動してきました。けれども残念ながら後継者がいません。そこで、技術の伝承などを目指すプロジェクトがスタートし、筑前琵琶を紹介する展示会なども予定されています。

ドリアーノ・スリスさんへのインタビューはこちらから。

Category
Art & Culture
Fukuoka Prefecture
Published: Sep 1, 2020 / Last Updated: Nov 7, 2022

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