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浮き沈みを実感。これぞ縦社会。

司が間違ったことを口走っているのに、部下は微笑みをたたえて反論すらなくただ座っている光景、なんども見たことあるよね?外国人ゲストとしてココにいる君たちなら、私同様、この「上司」の気分を味わったことがあるはずだ。これが、まさしく日本の縦社会。上に逆らうな、ってこと。もちろん欧米にも上司部下の関係はあるけど、仕事仲間として気を配ることも大切だから、上下は敢えて意識しないようにするのが普通だよ。何かあればとりあえず受け止めて、権力ではなく人として尊重するようにしてる。対して日本は、縦の関係がなくなったら、どのように対応すべきかで戸惑い、混乱する人で溢れるんじゃないかな?どうしよう?誰の指示に従えばいい?ってね。自分の判断で選択できないから、日本で選挙の価値がないのに通じるよね。

 たとえ長年住んでいても縦社会文化に無力感を味わうことはしょっちゅうあるよ。日本のその組織化されすぎた社会が、制度改革や平等な扱いを受ける権利を妨げているそうだ。日本人の中にも、才能があってもこの社会構造の中で抑制されるケースは少なくないはず。もちろん、完璧な社会に住んでいる人なんてどこにもいないってことは知ってるけど、ここは世界で3本の指に入る経済大国で、最も安全な国のひとつだよ。しかも政府主導で行なわれてきたことでなく、暗黙の了解で求められる協調ってやつの仕業っていうから驚きだよ。

日本の生活は、日常から人間関係にいたるまですべてが、協調という名の抑制で成り立っているとも言える。日本語の中にも巧みに組み込まれていて、敬語とカジュアルなシーンとは区別されているよ。オフィスでのフレーズ、レストランやコンビニのマニュアル言葉など、使い分けることができれば、その社会に埋もれているという“安心感”を得られるよ。ビジネスパーソンは食費を削ってでもビシッとしたスーツを着ることが重んじられていた時代があったほど、縦社会に従う日本。そんな日本に来た外国人は、自分が特別扱いをされているという優越感を感じたり、彼らの礼儀正しさに驚きを覚えるはずさ。

 例えば飲み会。新入りを愕然とさせるこの儀式は最高の例だよ。来日するや否や、オフィスパーティに出席するように言われると、外国人なら本国での苦い思い出が脳裏をよぎる。まだ知らない同僚らに囲まれ、居心地悪く前に立たされた上に、上司に対してフレンドリーに振る舞うように薦められる…。一方、日本では予め用意された席に通され、食事でもてなしをうける。ビールは手酌でなく、お互いが注ぎ合う。簡単な決まりごとだけど、全ての人がこの作法に従い、魔法のように物事がスムーズに進むんだ。ビール一杯のお酌から深い思いやりへ。まるでお互いの背中を掻きあうような感覚さ。新人は職場の人への気遣いを見せることで自分の地位を確固たるものにした、と満ち足りた気持ちで飲み会を後にするけど、本当に賢いヤツは、この「飲み会感覚」がオフィスでは通用しないことを知っている。縦社会文化は根強いからね。

 最後におさらいだ。さて、上司や客が間違ったことを言っている場合、どのようにすればいいだろうか?正解はないが、とある零細企業の社長がヒントをくれた。その社長のオフィスに海外から貿易担当者が尋ねてきた。社長は客をうやうやしくもてなし、客の言うことは、例え間違ったアドバイスでも笑顔で頷いて受け入れてみせた。その後、その社長は客の言うこととは逆のことをして、会社に大きな利益をもたらしたんだと。「許可されることを待つより、とにかくやってしまえ。問題があったら相手の寛容に訴えて許しをもらうほうが、何もやらないよりいい。」ってことかな。これってドーデショ?


エイブリー・モロー
英語教師/アメリカ

Originally published in Fukuoka Now Magazine (fn166, Oct. 2012)

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Fukuoka City
Published: Sep 26, 2012 / Last Updated: Aug 1, 2019

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