はそういった建築技術が登場する以前に遡るのだ。元来城は、軍事防御のための要衝、政治支配の中心として多くの機能を果たしてきた。そういった物質的な役割と、現在でも多くの人を魅了する繊細優美な視覚的役割とが、今日私たちの目に見える平静で優美な城の風景と、城をめぐる戦の歴史とをまるで対比しているかのように、その両極端な面が共鳴することで城の歴史を重厚なものにしている。
城の起源は、縄文時代以前の旧石器時代であると言われ、自分たちの土地を守るものとして発展していった。そして中世には山に沿って作られた城、山城が登場。争いの多い不安定な時代であったため、城の視覚的な役割よりも、軍事的防御という物質的な役割の方が強かった。争いは治まることはなく不安定な時代は続き、それに伴い山城の数は増加した。その後城の役割や様式は変化し、15世紀に入って今日一般的に言われる「城」という形ができた。それまでは軍事的な役割の方が重んじられていた城だが、入念に設計された威厳ある天守閣を作り、富とパワーを示すことが軍事的役割よりもさらに重要視されるようになったのだ。
当時のままの姿で今なお現存する城もあるが、九州に現存する城は全て修復や復元されたもので、全国各地の多くの城も1960年代に修復・復元された。今なお再建されずに残る城として一番有名なのが姫路城 (兵庫県)。1951年に国宝として、さらに1993年には世界遺産に認定された。
九州にも多くの城があるが、まずはフクオカ・ナウが九州内にある4つの城をセレクト。建築当時は一部の許される者しか足を踏み入れることのできなかった日本の城。 そんな厳粛な場へ誰でも、いつでも行くことができるのは今の時代を生きる私たちの特権!城の建築美や歴史だけでなく、その周囲へちょっと足をのばして観光するにもおすすめの4カ所。 これを機会に九州の文化、歴史を再発見してみよう。
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TIMELINE
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Ancient Times (~ 1160s)
古代までの城
歴史的に城は、戦闘用の砦として始まり、権力の象徴、政治の中心地として、自分たちの土地を守るものとして発展してきた。起源としては、縄文時代の前にあたる旧石器時代にあった自らの住居を守るために作った柵、土塁といったものにはじまると言われている。
Middle Ages (1160s ~ 1568)
中世の城
平安時代は平安京などいわゆる都城制を採用していた。武士中心の中世の日本では、武士の居住地の防護を目的に山城の数も増加。政治的拠点としての役割が強くなった。
Warring States Period (1568 ~ 1867)
近世の城
戦国時代を通じて、現在の城のイメージの中心となる石垣、天守などの形式はこの時期に登場。権力の象徴として天守閣が大きく華美になっていった。
Recent Past (1867 ~ 1945)
近代以降の城
明治時代に入ると政府による破却や管理放棄、その後の震災、軍による資材の接収による崩壊が進む。またこの時期に戦争のため多くのお城が焼失してしまった。
Present Day (1945~)
現在
昭和に入り主に地域振興の目的で復元や復興が始まり、日本に現存する城は重要文化財として街の歴史を伝える大きな役目を果たし、新たに観光地としてもにぎわいをみせている。
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Four Castles
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唐津城 (佐賀県)
唐津市街の北部に位置し、唐津湾の青い海に面した小高い満島山にそびえ立つ唐津城は、唐津の初代藩主、寺沢広高が7年の歳月を費やして1608年に築城した。現存するのは昭和40年に復元されたもの。天守閣を鶴の頭に見立て、左右に広がる松原が鶴が翼を広げた形に似ていることから、別名「舞鶴城」と呼ばれる。天守まではエレベーターも利用することができるが、石段をゆっくり上って行くと、中段では藤の古木や当時の井戸も見ることができ、天守と石垣を眺める景観ポイントでもある。五層五階地下一階からなる天守閣から見る、唐津湾を臨む景色はまさに絶景。天守閣内部は資料や武具、唐津焼や考古資料などが展示されており、また趣あふれる茶室や広間などは、休憩や会議の場として市民や観光客などに利用されている。唐津城周辺は、舞鶴公園として一般に開放されており、季節ごとにきれいな花で彩られる。
唐津城 (佐賀県) までのアクセス
唐津城までのアクセスは西鉄SUNQパスを使うのがお得。車窓から眺める海や松原も満喫して!天神バスセンター発 ⇒大手口 (唐津行、高速バス) 下車後、乗り換えて唐津城入口下車 (昭和バス)。 大手口まで所要時間70分(天神 ⇒ 大手口)。
片道 ¥1,000 (往復 ¥1,800)/ 西鉄SUNQパス利用可 (右ページ参照)
住所: 唐津市東城内8-1 TEL:0955-72-5697 入場料: 大人¥400 小人¥200 時間: 9:00~17:00
島原城 (長崎県)
島原城は長崎南東部、長崎県島原市、有明海を臨む雲仙岳の麓に位置しており、1624年に松倉重政が7年の歳月をかけて完成させた。現存しているお城は1960年に復元されたもの。大手御門跡から眺める島原城は、青い空に白い五層の天守閣とのコントラストの美しさが評判で、築後380年になる石垣は威厳も兼ね備えている。城の周囲に張り巡らされたお堀には春には菖蒲、夏には蓮の花が美しく咲き、城の魅力を増している。天守閣をはじめとする城内の資料館は、キリシタン資料・藩政時代の資料を展示する歴史資料館として今も尚、重要な役割を果たしている。
また1996年に、城内には1991年の雲仙普賢岳噴火災害を伝える「観光復興記念館」が開館している。島原城は美しさを兼ね備えるだけでなくその歴史を伝える重要な役割も果たしているのだ。
飫肥城 (宮崎県) までのアクセス
宮崎までは4枚綴りの回数券を使って高速バスに乗ろう。時間帯によっては、お得な学生割引の便もあるから要チェック!天神バスセンター発 ⇒ 宮交シティ (宮崎行、高速バス)下車後、 乗り換えて飫肥城下 (宮交バス)下車。宮交シティまで高速バス所用時間230分 (天神 ⇒ 宮交シティ) 。
フェニックスきっぷ4枚綴り ¥19,200 ※片道 ¥6,000 (往復 ¥10,000)/ SUNQパス利用可
住所: 宮崎県日南市飫肥10丁目1-2 TEL: 0987-25-4533 入場料: 大人¥600 高大生¥450 小中生¥350 時間: 9:30~17:00
熊本城 (熊本県)
熊本市内中心部に楠の大木を従え、圧倒的な存在感を放ちながら「熊本のシンボル」的な役割も果たしている熊本城。特に機能美にあふれた城として大阪城、名古屋城と並んで日本三名城の一つとして名高いこの城は、安土桃山時代から江戸時代にかけて熊本に本拠を置いた加藤清正によって1607年に築かれたと言われている。城内に入ると真っ先に目に入るのは、大楠と独特の曲線を描く『武者返し』と呼ばれる作りの石垣。上部になるにつれて反り返っており、簡単には登れないような構造が特徴。そして展望スペースとして解放されている熊本城大天守の最上階からは熊本市内が一望でき、当時の城主が何を思いながら眺めたのかを想像するのも面白い。今も市民に愛される熊本城は、築城400年を記念して2007年12月に市民の寄付による本丸御殿大広間の復元工事が完了し、2008年4月20日より一般公開されている。天守閣や建物の素晴らしさや石垣の美しさだけでなく、名実共に熊本のシンボル的な役割を担い敬愛され続けることこそが、熊本城の大きな魅力なのかもしれない。
島原城 (長崎県) までのアクセス
島原までは高速バスで直行、回数券を使ってお得に行くことができる。お城巡りで乾いた喉は、有名な島原の湧水で潤そう!天神バスセンター発 ⇒ 島原駅前 (島原行、高速バス)下車。島原駅前まで所要時間175分(天神 ⇒ 島原駅前)。島原号回数券 4枚綴り ¥9,200 ※片道¥2,900 (往復 ¥4,600)/ SUNQパス利用可
住所: 長崎県島原市城内1-1183-1 TEL: 0957-62-4766 入場料: 大人¥520 小中高生¥260 時間:9:00~17:30
飫肥城 (宮崎県)
飫肥城は宮崎市から、南へ車でおよそ1時間ほどの場所にある、昔ながらの街並みを残す「九州の小京都」と呼ばる飫肥町に位置している。飫肥城は誰が築城したというのははっきりしていないが、日向の地に武士団として勢力を伸ばした土持氏が南北朝時代に築城したのが始まりと伝えられている。その後、飫肥城の覇権をめぐる様々な争いや大地震を経て、ようやく完成したのは1693年。現存しているものは1978年、1979年に復元されたもの。飫肥城は周囲に9つの城を配した平城であったため、城内随所に門やお堂、石垣が趣深く存在している。
飫肥城を訪れる人は最初に、江戸文化の趣が随所に残る櫓門、『大手門』をくぐる。また9つの平城の一部で、江戸時代の書院造りの御殿として樹齢100年以上の杉を使って復元された『松尾の丸』は、城門や石垣もしっかり残っていて見応え十分。石垣や蔵、武家屋敷、商人通り、武家屋敷通りなど、城はもちろん城下町飫肥を徒歩やレンタサイクルで巡ってみるのもオススメ。
熊本城 (熊本県) までのアクセス
熊本城へは天神から高速バスで熊本直行便があるからとても便利。4枚綴りの回数券を賢く使おう!天神バスセンター発 ⇒ 熊本交通センター (熊本行、高速バス)下車。所要時間115分(天神 ⇒ 熊本交通センター ) ひのくに号回数券 4枚綴り ¥6,400 ※片道¥2,000 (往復 ¥3,600)/ SUNQパス利用可
住所: 熊本県熊本市本丸1-1 TEL: 096-352-5900 入場料: 大人¥500 小人¥200 時間: 8:30~18:00(4月~10月), 8:30~17:00(11月~3月)
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SUNQ Pass
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西鉄バスでは、SUNQパスなど九州各地への高速バスのお得な乗車券が発売されている。SUNQパスの詳しい情報や使い方は、右のページを参考にしてみよう。
友達と一緒に使うもよし!家族みんなで使うもよし!
九州のお城へ行くならSUNQパスを賢く使おう!
Originally published in Fukuoka Now magazine (fn113, May 2008)