Fukuoka Now編集長のNickとEmikoが、3月に屋久島でソフト・アドベンチャーを満喫してきました。
福岡からは、JALグループの日本エアコミューター(JAC)が屋久島との直行便を毎日運行しています。世界自然遺産登録されている屋久島や奄美など、自然豊かな地域に就航しているJACが採用する環境性能(低燃費、低騒音)を備えたターボプロップ機で約70分のフライトです。
今回の私たちの旅のテーマは「屋久島の大自然を堪能すること」。
そのために欠かせないのは屋久杉の森を歩く1日ハイキング、島を見て周りたいから半日サイクリング、そして、のんびりカヤックを楽しんで、博物館と焼酎蔵の見学、絶景スポット巡り。もちろん、屋久島ならではの美食も含めて計画を立てました。
まずは、屋久島について。
屋久島は鹿児島市の南約135kmに位置するほぼ円形の島です。九州最高峰の宮之浦岳(1,936m)を筆頭に1000m級の山々が連座し、ユネスコ世界自然遺産に登録される日本屈指の自然の宝庫として知られています。静寂な森の中、圧倒的な存在感で人々を惹きつけてやまない屋久杉をはじめ、苔むす森や老齢の木々、巨大な滝などワイルドな絶景に溢れています。
屋久島は最後の訪問から4年が経ちますが、以前に比べて新たなグルメスポットやAirbnbスタイルの宿泊施設がたくさんオープンしています。屋久島がアウトドアの聖地にとどまらず、自然と現代的な快適さが融合したスポットに進化していることを感じとり、より行くことが楽しみになりました。
屋久島は周囲132km、面積503km2の日本で5番目に大きい島です。「海のアルプス」という愛称が示すとおり、海から急峻にそびえ立つため、海岸部の平地から中央部の山岳地帯までの標高差が大きく、コンパクトな島ながら亜熱帯から亜寒帯までの気候を有します(12月から3月は山頂付近での積雪も稀ではありません)。
そして、屋久島といえば「雨」。「1カ月に35日雨が降る」と言われるほど、雨がよく降ります。私たちも滞在中は毎日のように雨に会い、その言葉が誇張ではないことを実感しました。しかし、この雨は決して嫌なものでなく、むしろ屋久島の魅力の一部で、豊かな森や透き通る清流を育む大切な恵みです。実際には島全体が常に雨に包まれているわけではなく、どこかしらで小雨(雨)が降っている、と言った方が正しいようです。
1993年には日本で初めて世界自然遺産に登録されました。90%が森林である屋久島の約5分の1が保護区域に指定され、1,900種以上の植物が生息し、屋久島にしか存在しない固有種が94種も確認されています。
屋久島のシンボルでもある屋久杉と静寂の森
屋久島を象徴するのは、巨木が立ち並ぶ苔むす森と悠久の時を生きる屋久杉。スタジオジブリの名作『もののけ姫』のインスピレーション源にもなったことでも知られています。
屋久杉の中でも有名なのは、樹齢2,000年から7,200年ともいわれる屋久島最大の巨木「縄文杉」です。しかし、今回の旅で私たちの印象に残ったのは、縄文杉ほど知られていないものの、圧倒的な存在感を放つ「大和杉」でした。樹齢3,000〜4,000年といわれ、屋久島第二の巨木ながら訪れる人も少ないため、静かに森と屋久杉を感じることができる素晴らしいスポットです。

大和杉の足元で。とにかく大きい!
気軽に散策を楽しみたい方には、「ヤクスギランド」もおすすめです。苔むした森の中を川沿いに遊歩道が整備されており、絶景ポイントを効率よく巡ることができます。入場料はわずか500円。初心者向けのコースからしっかり歩けるコースまで、誰でも気軽に屋久杉の森を体験できます。駐車場やトイレも整備されています。
おすすめの旅程
1日目
福岡空港からJAL3672便に搭乗したら、わずか70分で屋久島へ到着。到着後は、予約しておいたレンタカーを空港でピックアップ(4日間で25,000円程)して、さぁ出発!。屋久島は公共交通機関が限られているため、レンタカーがあった方が圧倒的に便利です。
最初に訪れたのは空港から程近い場所にある「屋久杉自然館」。屋久杉の生態の他、島の人々との関わりなど、歴史も含めて興味深く展示されています。靴を脱いで上がる館内の床には栂(ツガ)のブロックが敷き詰められており、踏んだ時の感触や音も、この博物館の魅力の一つです。雨の日の観光にもぴったりのスポットです。
次に向かったのは、「本坊酒造 屋久島伝承蔵」です。甘く軟らかな屋久島の水と良質なさつま芋を甕壷で仕込み、屋久島ならではの焼酎をつくっています。また、長野県にあるマルス駒ヶ岳蒸溜所や鹿児島県南さつま市にあるマルス津貫蒸溜所で製造されたウイスキー原酒を熟成させる「マルス屋久島エージングセラー」も併設しています。
施設見学の後は、スタッフの説明を聞きながら、目の前の蔵で造られたお酒の試飲ができ、屋久島島内限定販売の焼酎や、目の前のエージングセラーで熟成されたウイスキーなど、あまり一般流通していないお酒も試飲して購入することができます。
雨が小降りになったので、美しい「千尋の滝(センピロノタキ)」へ。花崗岩の絶壁を勢いよく流れ落ちる落差60mもの迫力ある滝は、駐車場からすぐの場所に展望所があります。気軽に屋久島の自然美を楽しめる絶景スポットの一つです。
そして、初日最後の見どころは「中間ガジュマル」。中間川のほとりにある巨大なガジュマルは、まるで巨大な門のよう。
夕食は念願の「四世同堂(しせいどうどう)」にて。豊かな漁場を求めて屋久島に移住してきた若きシェフが、2024年12月にオープンしたレストランは、これからの屋久島のガストロノミーの可能性を表す場所です。食材に寄り添うクリエイティブな中華キュイジーヌの品々が次々と出てくる素晴らしきディナーでした。
2日目
宿泊は、2022年7月に屋久島に新しく誕生した1日1組限定の小さなホテル「ALASKA HOTEL」。人気ドーナツ店(金曜・土曜のみ営業)の2階にあり、海と山が見える広々とした快適な部屋が魅力です。朝食付きで、手作りのサンドイッチやおにぎりは、早朝のハイキングに向けたエネルギーチャージにぴったり。新鮮なドリップコーヒーを好きなタイミングで飲めるのも嬉しいサービスです。
今日のメインイベントは「大和杉トレッキング」。これまでに、宮之浦岳や黒味岳には登ったことがあるのと、霞がかった天候を考慮して、山頂を目指すのではなく森を選択しました。ユネスコ世界自然遺産に指定された苔むす森を歩く8km、約7時間のトレイルです。
静寂に包まれた大和杉の森へ
出発地点は「ヤクスギランド」。苔むした原生林を通り、屋久島山岳部の自然を体感できますが、道迷いしやすい所があるので登山経験だけではなく、地図読み能力が求められるコースです(体力レベル3/5、難易度E)。私たちからのアドバイスは、屋久島の雄大な自然をより楽しむには、屋久島公認ガイドと一緒にアクティビティに臨むこと!今回私たちを案内してくれたのは、英語が堪能で20年以上のガイド歴をもつ会田淳一さん。知識が豊富で、屋久島の森について多くのことを教えてくれました。
このコースのハイライトは大和杉。苔むした静寂の谷にひっそりと立つ姿は、圧倒的な存在感です。この日は他の登山者に一人も会わず、まるで時間が止まったかのような神秘的な空間を独占できました。
屋久島固有のニホンザル、ヤクシマザル。ヤクザルとも呼ばれ、屋久島でしか見られません。森の中でふと出会うかも!
3日目
部屋から景色を楽しみつつ、美味しい朝食でエネルギーチャージをしたら、地元のアウトドアショップ「山岳太郎」へ。屋久島公認ガイドで「山岳太郎」代表の渡邊太郎さんと合流し、クロスバイクでサイクリングに出かけます。
神社、小川、滝、そして趣のある集落を巡りながら、車通りの少ない裏道をのんびりサイクリング。観光地とはひと味違う、地元の人々の暮らしが垣間見えるこのツアーは、屋久島の日常に触れられる体験でした。
午後はのんびりカヤック体験
昼食後は、穏やかな安房川をカヤックで探検。ガイドを務めてくれたのは、ルアーフィッシュ愛好家であり、経験豊富なカヤックインストラクターの東 瑞葉さん(愛称ミッシュ)。
川の両岸に広がる森と、背後にそびえる雄大な山々が織りなす景色の中、静かに水面を進む時間はまさに癒しのひととき。途中でちょっとした釣りにも挑戦しましたが、今回は残念ながら釣果なし。大自然に包まれてのんびりと過ごすこのアクティビティは、初心者も一緒に楽しめるおすすめの体験です。
旅の締め括りはシーフードディナー
屋久島最後の夜は「漁師ダイニングバーNINA」へ。オーナーシェフのノブさんは、漁師として船にも乗っていた経歴を持つ魚のプロ。屋久島近海で獲れた新鮮な魚介類と旬の島野菜を使って、おまかせのコース料理でもてなしてくれます。
アットホームで温かみのある雰囲気の中、地元の食材を活かした創造的な料理を堪能しながら、旅の思い出を振り返るひととき。まさに、アウトドア尽くしの一日にぴったりの締めでした。
4日目
あぁ、ついにチェックアウト…。しかし、出発前にもうひとつ絶景スポットを訪れようと、「トローキの滝」に向かいました。屋久島の自然美を象徴するようなこの滝は、海へと直接流れ落ちる珍しい滝のひとつ。雄大な海、清らかな川、深い森、そびえ立つ山々、そして時折降る雨。屋久島の魅力がすべて詰まった、まさに絵になる風景でした。
旅のまとめ
今回の旅は、充実しながらも決して慌ただしくない、絶妙にバランスのとれた4日間でした。限られた時間を最大限に活用しながら、屋久島の自然を存分に楽しむことができました。
もちろん、まだまだ体験しきれない魅力が屋久島には無数にあります。福岡からわずか1時間ちょっとでアクセスできるこの島は、まさに大自然の楽園。ひとり旅、カップル、家族旅行——どんなスタイルでも楽しめる、理想的なアウトドアデスティネーションです。気分をリフレッシュする旅を探しているなら、ぜひ屋久島へ!
福岡空港からひとっ飛びですよ。

最新鋭ターボプロップ機から見える屋久島