自然や暮らしのあらゆるところに神様がいると考える日本の伝統的な宗教「神道」。その神様たちを祀る神社は、街のあちこちで見かけることができます。今回は旅の記念品にもぴったりのユニークなお守りや御朱印を授けてもらえる神社を中心に特集します。
お守りや御朱印ってどんなもの?
年末年始になると多くの日本人が神社を訪れます。1年を無事に過ごせた感謝を伝え、新しい年を平穏に過ごせるよう祈願するのです。神社にお参りした後には、おみくじを引いたり、お守りや御朱印を求める人もいます。おみくじはその時々の運勢を占うもの、お守りは身につけて神様に守ってもらうもの、御朱印は神社に参拝した証としていただくものです。
神社によって祀る神様や由来が違うため、お守りや御朱印も祀っている神様や神社の歴史にちなんだものになっています。特徴的なお守りや御朱印のある福岡の神社をいくつか紹介しましょう。
光雲神社
・福岡市中央区西公園13-1
・受付:9:00〜17:00
福岡藩の始祖である黒田官兵衛(如水)と、その息子で第一代福岡藩主となった黒田長政を祀る神社です。もとは福岡城内にありましたが、後に現在地の西公園に移されました。小高い丘になった西公園の展望台からは福岡の市街地や博多湾が見渡せ、とりわけ春の桜の名所として知られています。
戦国武将として名高い2人を祀っているだけに、勝負事に強い「勝守」が人気です。武将姿のイラストや愛用していた刀をデザインしたカード型のお守りもあり、財布などに入れて持ち歩くことができます。可愛い足形のついたペット用お守りもあります。御朱印には黒田家の家紋をデザインしたものなどいくつかの種類があります。
拝殿の賽銭箱にお金を入れると、鶴の鳴き声が響き渡るという変わった仕掛けがあります。天井に描かれた幸運を表す鶴に合わせたもので、鶴が舞うように見えたという福岡城の姿にもちなんでいます。手を洗う手水舎には大きな水牛の角がついた兜の飾りがありますが、実際に長政がかぶっていた兜を模したものです。この兜のおかげで戦場で命拾いしたという逸話が残る幸運の兜です。
小烏神社
・福岡市中央区警固3-11-56
住宅街の中にひっそりとある神社ですが、その創建はかなり古いと考えられています。小烏神社に祀られる神様は、最初は宮崎・ひむかの地に降り立ち、その後に福岡に現れたとされます。そして、この神様の化身が八咫烏(ヤタガラス)です。八咫烏は日本神話に登場する3本足のカラスで、道案内の神様でもあります。小烏という名称も八咫烏にちなんだものと考えられます。
八咫烏は勝利へ導く神、幸運の前ぶれとして現れる鳥と考えられていて、日本では昔からさまざまな場面でシンボルとして利用されてきました。現在は日本サッカー協会のシンボルマークやエンブレムとして用いられています。小烏神社の御朱印にも八咫烏の印が押されていて、おみくじはサッカー日本代表のシンボルカラー「サムライブルー」にちなんだものです。
* 御朱印は警固神社にて受付(9:00〜16:30)
小さいながらも美しい本殿をはじめとした境内の建築物は、国の登録有形文化財に指定されています。樹木などもよく手入れされていて、落ち着いた日本庭園のような風情があります。神社は少しわかりにくい場所にあり、急な階段を登って行く必要がありますが、高台からの見晴らしもよく、わざわざ訪ねて行く価値がある神社です。
警固神社
・福岡市中央区天神2-2-20
・受付:9:00〜16:30
福岡の中心地・天神の真ん中にあり、隣接する警固公園と一体となって都心のオアシスになっている警固神社。警固という地名は、かつて鴻臚館近くにあった防衛施設「警固所」に由来していて、この神社も最初は福岡城内にありました。17世紀の始めに移されて以来、400年以上にわたってこの地を守り続けています。
境内には樹齢300年あまりの見事な大きな楠の木が緑の葉を茂らせています。2022年末には敷地内に現代的な9階建てのビルが完成。ブルーボトルコーヒーや福岡の老舗フルーツ店が営むカフェなども入っていて、神社の緑を見ながら一休みすることができます。境内には商売繁盛の神様である今益稲荷神社もあります。稲荷神社にはキツネの像がつきものですが、ここには全国でも珍しい笑顔のキツネがいるので探してみてください。
色も柄もバラエティ豊かなお守りがあり、願い事に合わせて選ぶことができます。おみくじや絵馬(願い事を書いて神社に奉納するもの)は、季節によって変わる珍しいもの。警固神社オリジナルのブレンドオイル「御神香」はお土産にもぴったりです。
鳥飼八幡宮
・福岡市中央区今川2-1-17
・受付:9:00〜16:30
創建から1800年あまりと伝えられる、福岡でも有数の古い歴史を持つ神社です。祀られている神功皇后が戦いから凱旋した際、鳥飼村の人々から厚いもてなしを受けて喜び、後に社殿が建てられたのが発祥とされます。神功皇后以外にもいろいろな神様が祀られていて、とりわけ縁結びに御利益があるとされています。
歴史ある神社ですが新しいことにも積極的にチャレンジしています。205年ぶりに建て替えられた拝殿は、日本の伝統技法である茅葺で造られた壁が目をひく斬新なデザイン。内部には石と木でできた厳かな空間が広がっています。また、日本で初めて常設のメタバース神社を創建。誰でも、いつでも、どこでも参拝できる神社として、現在の社殿とほぼ同じ姿がメタバース空間に再現されています。
神社オリジナルの「ご縁結びの紐」は、2本1組になった紐の1本を神社の樹木に結び、もう1本を身につける祈願の方法です。2人で紐を1本ずつ持ち帰っても大丈夫です。それぞれ意味合いの違う10色があり、願い事に合わせて選べます。近くに拠点のある地元の人気球団ホークスにちなんだ御朱印や、まるで相撲力士が動くように見えるパーパークラフトの御朱印もあります。
紅葉八幡宮
・福岡市早良区高取1-26-55
・受付:9:00〜17:00
最初はこの地に移ってきた個人の家が祀る神様でしたが、その後に村の神様となり、江戸時代には福岡藩主・黒田家の守り神となりました。歴代の福岡藩主が社殿や宝物を寄進したので、次第に人々が参拝するようになり、門前町が発達して地域も栄えていきました。現在の西新・高取・百道・藤崎あたりで、今も賑やかな商店街が続いていますので、このエリアを散策するのも楽しいでしょう。
「モミジ」は紅葉のことを意味していて、その名の通り秋の紅葉で有名です。一帯は紅葉山公園として整備されていて、紅葉シーズンには多くの人が訪れます。11月最終週の土・日に行われる「もみじ祭」では、この時だけの特別な御朱印をいただくことができます。お守りなども紅葉をデザインしたものが多くあります。
日本ではモミジの葉は子供の手に似ているとされています。そのため安産や子供の健やかな成長を願う神社としても知られ、妊娠5ヶ月に行う「安産祈願」、生まれて間もない時期の「お宮参り」、満1歳で行う「お餅踏み」、3・5・7歳を祝う「七五三」などで利用されることが多い神社です。
櫛田神社
・福岡市博多区上川端町1-41
・受付:9:00〜17:00
キャナルシティ博多や川端通商店街などの観光スポットに近く、博多の総鎮守として市民に親しまれる櫛田神社。博多を代表する祭である博多祇園山笠が行われる神社で、通常は祭り期間中しか見られない飾り山笠が、櫛田神社の境内には1年中設置されています。
小さいながらも境内には見どころがたくさんあります。楼門の天井に吊り下げられた恵方盤には干支の動物がついていて、毎年の吉方を示しています。拝殿を見上げた破風と呼ばれる部分にはユーモラスな風神雷神の彫り物が。櫛田神社のシンボルでもある見事な大イチョウ、博多の豪商の屋敷にあったものを移築した博多塀、相撲力士が持ち上げた石を奉納したコーナーもあります。試しに自分で持ち上げることができる「試石」もあるので、力自慢はトライしてください。
お守りには博多の伝統工芸品を使ったものが多く、お祝い事に欠かせない水引を使った縁結びのお守り、800年近い歴史がある博多織を使ったお守り、シンボルのイチョウの葉がついたお守りなどがあります。旅行の安全を願う英語表記のお守りもあります。
住吉神社
・福岡市博多区住吉3-1-51
・9:00~17:00
全国に2000社以上あるとされる住吉神社の中で、最初に創建されたのが福岡の住吉神社だとされています。1800年以上の歴史があり、住吉三神という3人の神様を祀っています。この神様は海の神様、あるいは星の神様として知られ、航海や海上の安全を願う神様として信仰されてきました。以前はこの神社のあたりまで海が入り込んでいて、その様子を描いた古地図も残っています。
航海の神様であることから、現在は交通安全の神様として参拝する人も多くいます。また相撲ともゆかりが深く、境内には相撲の土俵や古代の力士像などがあります。毎年、大相撲九州場所が始まる前には「土俵入り」と呼ばれる儀式を横綱が奉納します。博多駅からほど近い都心にありながら、広々とした境内は緑が豊かで落ち着いた雰囲気。
星や相撲をモチーフにしたお守りや御朱印があり、小さな力士の人形がついた相撲おみくじもあります。力士の着物で作った御朱印を入れる袋は、九州場所の期間中、住吉神社に宿舎を構える相撲部屋の協力で、毎年柄が変わる限定品です。