食材の宝庫、佐賀特集。これまで3回にわたって野菜や豆、プラントベースの料理や器にスポットを当てて、佐賀各地の飲食店を紹介してきました。今シリーズ最後となる4回目は、その料理を目指してわざわざ行きたくなる3軒の飲食店を紹介します。
ベジタリアンやヴィーガンは美味しい料理に聞こえない、そんな声をよく耳にします。確かに植物性の食材だけで作ることは、制限が多くなることではあります。しかし、限られた食材であればあるほど、食材にも調理にも工夫を凝らす料理人、そしてそれを支える生産者がいます。
最初に訪れたのは、佐賀県有田町から長崎県佐世保市を結ぶ松浦鉄道に現存する最古の木造駅舎「蔵宿」駅で営業する野菜料理カフェ「薪の宿から」。この1913年築の小さな駅舎にキッチンがあるだけでなく、待合室やホーム側の外の席でも食事もできます。
この大らかでユニークなカフェの店主は、高岡盛志郎さん。日本料理店勤務を経てカリフォルニアで6年間暮らし、カリフォルニア料理発祥のオーガニックレストラン「シェ・パニース」に影響を受けた彼が作る料理は、近くで採れる食材を使った野菜料理です。
基本はプレートメニューで、この日は、カリフォルニアサラダプレート（薪の石窯で焼き上げたカンパーニュ添え）と、玄米リゾットのプレートの2種類。これにスープやデザート、ドリンクをつけるセットメニューもあります。デザートは、アメリカンスタイルのしっかりしたヴィーガンケーキや豆乳クラシックプリンなど、味もボリュームも満足な品々が揃います。
ドリンクも薪火焙煎のコーヒーや、オーツミルクのチャイ、バナナリーフ茶、ナチュラルワイン、オーガニックビールなど、徹底したこだわりのラインナップです。近所の人たちも、自分たちが作る野菜の変貌ぶりを楽しみに立ち寄り、ランチやカフェタイムを過ごしていきます。
薪の宿から
・佐賀県有田町蔵宿丙（松浦鉄道 蔵宿駅内）
・0955-35-4714
・10:30〜17:00、土曜11:00〜17:00
・定休：木曜、日曜
・https://www.instagram.com/makino_yadokara/
・ベジメニュー（税込）：カリフォルニアサラダプレート¥1,650、玄米リゾットプレート¥1,650、ヴィーガンケーキ¥610
次に訪れたのは、唐津。玄海灘や唐津湾、脊振山系の山々と松浦川流域に沿う平坦部に恵まれ、風光明媚な場所が多く、食材が豊富なことでも知られます。
料理を通して唐津の豊かさを表現することがライフワークの中江義行さん。この地で生まれ育った彼がオーナーシェフを務める一軒家レストラン・ワイズキッチンは、完全予約制。地元の農園や漁港に足を運んで仕入れる食材からインスピレーションを得て、メニューが決まります。
今回いただいたのは、野菜だけを使った特別コース。それぞれの野菜本来の味が際立ち、かつ、皿の上でバランスが取れるように多様な調理方法で提供されます。焼きものの名産地でもある佐賀・唐津だけあって、唐津焼や有田焼など、近隣で作陶される美しい器と、カラフルな野菜料理とのコンビネーションも、ここでの食事の楽しみの一つです。
この日のお野菜ランチコースのメニュー；
・唐津のトマトと木綿豆腐
・伊万里のお米と肥前町のにんじん
・糸島のイタリア野菜
・唐津のにんじんと芽キャベツ
・浜玉の菊芋とブラウンマッシュルームのスープ
・浜玉のグリーンアスパラガスと糸島のパプリカ
・相知町の原木椎茸、大豆
・糸島のあまおう、豆乳ヨーグルト
ワイズキッチン
・佐賀県唐津市和多田西山3-36
・0955-72-8716
・12:00〜15:00、18:00〜22:00
・定休：日曜
・https://www.yskitchen.biz/
・ベジメニュー（税込、別途サービス料10%）：お野菜ランチコース¥7,700、お野菜ディナーコース¥12,100
・3日前までに要予約、テーブルごとの同一オーダー制
そして最後の訪問地は、ここ。
武雄の奇跡、そう呼びたい場所を見つけました。
武雄のシンボルと言われる御船山の麓にある、江戸時代末期（1845年）に作られた広大な日本庭園「御船山楽園」。この敷地内にその場所はあります。「ロケーション・食材・料理・ワイン・サービスなど、思い思いの相乗効果（シナジー）を感じてほしい」と、佐賀で生まれ育ったオーナーシェフ梶原大輔さんが、2018年にオープンしたイタリアンベースの創作料理レストラン、カジ・シナジーです。
若かりし頃にバリスタを目指して訪れたイタリアで、彼が見つけ、感銘を受けたのは、コーヒーではなく、地元愛に溢れる人と彼らが提供してくれる地域の食事でした。そこから、その土地ならではの食やカルチャーに関心を持ち、料理人としてその土地のメッセージを発信していくことに打ち込むようになります。
食材は、信頼する生産者から直接仕入れ、農園にも足繁く通い、釣りも自ら行います。そして、生産者が大切に育てる食材は形などに関係なく受け入れ、美味しい一皿へと変化させることは当然であり、それに喜びを感じるという梶原シェフ。
料理だけでなく、食につながる環境全てに関心を持つ彼の哲学を表すようなメニューの代表格に、ほうれん草の根から葉までパーツごとに調理方法を変えて調理する唯一無二の一皿、「ごぼうホウレンソウ」があります。
ある時、農園を訪れた際に収穫されずに畑の隅に残っていたホウレンソウに目が止まった梶原シェフ。これまでであれば破棄されるはずの大きく育ちすぎたそのホウレンソウを持ち帰って試食したところ、これまでに味わったことがない味に大きな衝撃を受けたのです。今では通常の4倍程の期間をかけて育てるこのホウレンソウが、カジシナジーの冬のシグニチャーメニューです。
地域の食材を使うヴィーガンコースは、洗練されたイノベーティブなプラントベースのメニューが計10皿近く提供されます。いずれも、食材の味を引き出したナチュラルフレーバーですが、それぞれのメニューに隠れる小さなサプライズが楽しみで、目の前の一皿を食べながら、すでに次が気になる、そんな刺激に満ちたコースです。
本日のメニュー：
1. 菊芋、仏手柑のスープ
2. 自家製ココナッツオイルのブレッドととシナモン香りづけ酒粕、梅
3. インカのめざめ（ポテト）、レンズ豆、乾燥舞茸、金柑、春菊の新芽、香草オイル
4. ごぼうホウレンソウ
5. 蕪、ふきのとう、菜の花
6. トウモロコシ、熟成ヤングコーン
7. ブロッコリー（茎のピューレと花、ダイコンの花）
8. かぼちゃ、安納芋、大豆、エノキ、パクチー
9. 光樹トマトの手打ちパスタ
10. 柑橘のデザート
11. 嬉野ほうじ茶
カジシナジーレストラン
・佐賀県武雄市武雄町武雄4239-1
・0954-38-9007
・12:00 or 13:00（一斉スタート）、18:00 or 19:00（一斉スタート）
・定休：月曜
・https://kaji-takeo.com/
・紹介メニュー（税込、別途サービス料10%）：ヴィーガンコース¥16,500（要予約）
Fukuoka Now X 一般社団法人佐賀県観光連盟
佐賀県ではベジタリアン対応が可能なレストランを応援しています。
>> 佐賀県公式：佐賀ベジタリアンガイド（野菜を楽しむレストラン紹介）
Fukuoka Now 佐賀特集 2024春（4回シリーズ）
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・食材の宝庫 佐賀 vol. 01 旬の野菜を食べに行こう！
・食材の宝庫 佐賀 vol. 02 豆腐を食べに行こう！
・食材の宝庫 佐賀 vol. 03 器とヘルシー料理
・食材の宝庫 佐賀 vol. 04 素晴らしきシェフ達
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