原田 浩司


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自分の舌で“美味しい”と感じるものをみつけてほしい。

もうすぐバレンタイン。本命チョコ、義理チョコ、時に自分へのごほうびチョコ…と、最近ますますヒートアップするチョコレート商戦。そこで今回は実家である老舗菓子舗のチョコレート部門を自ら立ち上げ、チョコレートを愛して止まない職人でもある原田さんをクローズアップ。年に1度の大イベントに参加する前に、ぜひご一読を。

Q.“仕事”としてのチョコレートに出会ったのは?
A.昔うちの店で働いていたオーストリア人が地元に戻って店をはじめるというので、そこを訪ねて住み込みで修行していました。この時点では洋菓子全般を勉強していたんです。ちょうど同じ時期、弟が南ドイツの小さな町に短期留学していたので遊びに行ったんです。その時にふらりと立ち寄ったカフェとショップを兼ねた店が凄く気に入って。味や雰囲気はもちろん良かったし、店で使っていたチョコレートがうちで仕入れていたのと全く同じものだったので運命的なものを感じたのかもしれませんね。店主に「来年からここで働かせてほしい」と頼んだのが、きっかけです。

Q. そこでチョコレートづくりを学んだのですね。
A. そうです。オーストリアで修行した後、ドイツでチョコレートの世界にどっぷりのめり込んでいきました。トリュフの基本を学んだのもここです。いろいろな組合せで幾通りものチョコレートが出来るから、楽しくてしょうがなかった!豊富な果物が獲れる土地だったんで、チョコレートに使うリキュールなどもすべて自家製。牛乳もその土地で取れるものを使っていました。チョコレートのみベルギーのを使って、それ以外はすべてその土地のものでまかなっているのがいいなぁと思って。

Q. 海外での生活はどうでした?
A. 南ドイツの「シェタフフェン」という小さな町だったのですが、スイスとの国境から30分、フランスとの国境からも30分の自然に囲まれた素晴らしい場所でした。休みの日には、マウンテンバイクばっかり乗っていましたよ。辛かったのは寒さくらいです(泣)。-20℃の時もあって、外にりんご置いてたら、石みたいにカチンカチンに凍ってました。オーストリアの生活では、何しろ下宿先にいたおばあちゃんがとにかくケチな人で!「冷蔵庫を開ける時には何を取るかちゃんと決めてから取りなさい」とよく叱られて(笑)。今でも冷蔵庫を開ける時には思い出しますよ(笑)。

Q. 戻ってから原田さんご自身でチョコレートブランドを立ち上げたのですか?
A. そうです。老舗の菓子メーカーだから、「夏の売れない時期はどうするのか」とかいろいろ反対意見もありましたが、「だったら饅頭売ればいいじゃないか」みたいな反発心もあって(笑)。チョコレートだけだと難しかったかもしれませんが、他の商品もあるから思い切った試みも許されたんだと思います。

Q. 原田さんにとって美味しいチョコレートとは?
A. 僕は寒い日に食べるチョコレートを美味しいと思ったり、お酒を飲む時はビターチョコを食べたかったり……と、割とシチュエーションによって変わるかな。もちろんバレンタインに代表されるように、恋人と一緒に食べるチョコレートは最高ですね!そうそう、チョコレート = 子どもの食べ物、みたいなイメージがあるけれど、昔ヨーロッパではチョコレートは精力剤だったんですよ。貴族のバイアグラ!それをスイス人が脱脂粉乳を入れてミルクチョコレートにして、子どもをはじめ、市民へと広まっていったそうです(笑)。

Q. 作り手として、チョコレートをどのように食べて欲しいって思いますか?
A. 自分で食べて美味しいと思うチョコレートを見つけて欲しいですね。最近は少し消費者がマスコミに踊らされ過ぎているのではないかと…。海外から錚々たるショコラティエが登場し、それが年々増え続けていて。それはそれでチョコレートの世界も広がるからいいことだと思うのですが、大事なのは自分の舌で“美味しい!”と感じることが一番ですから、どんどんいろんなチョコレートを食べ比べてみてほしいと思います。そして本当に美味しいと思うものをプレゼントしてほしいですよね。

Q. 原田さんのこれからの夢は何ですか?
A. 先ほど述べたように、最近ではフランス、ベルギー、ドイツ、オーストリアなど、世界の有名なチョコレートブランドが次から次に日本に入ってきている時代です。だから、私は逆に日本から海外に発信してみたい!って思うんです。うちの新作に長崎産の生姜を使ったチョコレートや八女の玉露を使ったチョコレートがあります。今後は熊本の柑橘類の王様と言われている晩白柚(ばんぺいゆ)を使ったチョコレートを作りたい、と構想を練っているところです。洋菓子というと、海外から輸入した原料を使ってしまいがちだけど、九州は果物の宝庫なのでそれを活かしたいなぁと思うんですよね。以前修行していた南ドイツの店のように、地元の食材を活かしたチョコレートを作りたい。そして、それを世界に向けて発信することが今の目標かな。

PROFILE
原田 浩司
福岡市出身
創業300年以上続く、地元老舗菓子メーカー「千鳥屋」の常務取締役。大学卒業後に製菓学校へと進み、その後海外へ。オーストリア、南ドイツの修行を経て、帰国後、自社のチョコレートブランド「アナベル」を立ち上げる。現在は新宮にある工場と福岡のショップを行き来し、発案、製作、販売とすべて携わる。
http://www.chidoriya.co.jp

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