Kyoko Matsuoka


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Kyoko Matsuoka

Kyoko Matsuoka/松岡恭子
福岡出身
1987年九州大学工学部建築学科卒業後、東京都立大学大学院へ。その後、コロンビア大学大学院建築学部修士課程修了。ニューヨークへの設計事務所で働き約1年後に独立。九州大学芸術工学部、鹿児島大学、台湾実践大学などで非常勤講師を務めている。 2005年には、約10年の年月を経て携わった新北九州空港連絡橋が完成予定。今年大名の建物で福岡県美しい街づくり賞大賞を受賞。

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Q.唐突ですが、実はちょっと気になってたことがあって…。いつも黒っぽい洋服が多いですよね~。どうしてなのかなって。
A. そうなんですよ~。持ってる服の中でも70%くらいが黒もしくはグレーの服なんです。黒って楽でしょ。打合せがあったり、建設現場に立ち会うことが頻繁にあるから、黒を着ていれば現場でも汚れないし!(笑)建物が主役で私は黒子ですからね。

Q.なるほど…確かにそうですねー。打合せや現場など、建築の仕事って“男の世界”というイメージですが、実際はどうなのでしょう?
A.確かにその通りです。クライアントも、現場の作業に関わる人も圧倒的に男性が多いですね。

Q.そういう男性社会の中で、女性が仕事をしていくことってやはり大変ですか?
A.ちゃんと仕事に取り組み、結果を残していくことが大切だと思います。それは男性だって同じですけど。私の場合、「女性だから」「海外にいたから」という理由で期待されることもあるのかもしれません…。

Q.建築という専門分野を海外で学び、そのまま向こうで就職、そして独立とさまざまな経験をされていますが、大変だったのではないでしょうか?
A.そうですね。最初は寝る暇もなく、勉強してました。そもそも違う文化で暮らすことに慣れるまでが大変ですよね。渡航してすぐは、“言葉”というコミュニケーションツールを失っている状態でしょ。会う人、会う人に対して、「この人信用できるのかな?」という感じです。ところが、1年経って気付いたことは、最初に抱いた印象と1年後の印象ってあまり変わらないんですよねー。言葉の一言一言が分からなくたって、その人が醸し出すものって言葉以外にたくさんあるとわかりました。

Q.留学時の思い出深いエピソードはありますか?
A.最初は、何もかもパニック状態でした。入る予定だった寮がなく、しばらくホテルで暮らしていたんです。ある真夜中、あまりのストレスで、ホテルに帰るタクシーの中でポロポロと涙が止まらなくなってしまって…。するとターバンをぐるぐる頭に巻いたインド人らしき運転手が突然振り返って「お前どうしたんだ!」って。彼はニューヨークへ来て3年になるらしく、当初大変だった時のことを話してくれ「時間が経つといい街だって気付くから心配するな」って勇気づけてくれたんです。そして、ホテルに入ると、涙した私に気づき、今度はホテルのスタッフが近寄ってきて…。サービスということではなく、心から心配してくれていたのが分かりました。忘れられない思い出ですね。ニューヨークなんて、アメリカ人ばかりじゃないし、田舎から出てきている人だってたくさんいる。みんな一生懸命に生き抜こうとしているから、私の状況や心境をまるで自分のことのように思って気遣ってくれたんでしょうね。そう思うと逆に、福岡に住んでいる外国人に対して、福岡の人々は優しく映っているのかなぁ~ということが気になりますね。

Q.さて、来年いよいよ松岡さんが長年に渡り携わってきた橋が完成するんですよね。今の心境は?
A. この橋は私が手掛けた中でも一番大きな仕事なんです。関わってすでに10年以上が経つこの仕事は、とても教えられることの多かったプロジェクトです。アメリカで感じたこと同様に今回もコミュニケーションの大切さを改めて実感しました。プロジェクトが大きければ大きいほど膨大な人とのやり取りが生まれます。行政や各分野の専門家や施工者など、それぞれに対して表現を変えて分かるように説明していかなくてはなりません。デザインというのは、自分が良ければそれでいいというのではありませんからね。多くの人に「そうだね」と納得してもらうには、かなりの時間と労力がかかりましたが、それによってデザインも客観性をもちますし、私自身も鍛えられました。

Q.松岡さんの中での一番大きい仕事が橋ならば、一番小さな仕事って何ですか?
A.コーヒーテーブルなんです。でも、仕事の大小って関係ないですよね。橋はそこに行かなくちゃ見られないものですが、反対にコーヒーテーブルは、全国に流通されていて、どこかで誰かが使ってくれている。そういう面で、どっちが大きな仕事って言えませんよね。だから、いろいろな仕事が楽しいって思えるんですけど!

Q.コーヒーテーブルから海上橋まで、幅広い仕事内容ですよね~。ところで、建築家の視点から福岡の街のモラルやマナーについてどう思われますか?
A.人って慣れてしまうとそこにある問題が見えなくなるんですよね。何がおかしいかということを一人一人が考えなければ街は良くならないと思うのです。行政まかせではいけないのでは…。「市民(シチズン)」というのは、単に選挙権がある、税金を納めているだけではなく、自律的に「公(パブリック)」に対して参画する人だと思います。建物でも、公園でも、道路でも、本当に美しいと思えるものが増えていけば、イタズラも減ると思うし、美しさがモラルを導くこともあるのではないでしょうか。逆に言えば美しい建築が少ないんですよね。一人一人人間が違うのに、経済効率や既成概念でパターン化された空間に押し込まれるのは窮屈だと思います。もっと多様な住まいや空間があっていいはず。そんな多様な場が増えていくことが福岡という街の成熟度、深さ、面白さになると思います。そんなデザインを続けていくことが私の役目です。

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クセ?
アビシニアンという種類の「アビ」という猫を飼っているのですが、「アビアビアビ~♪」と口ずさみながら歩くのがクセみたい。とても美しく個性的な猫なんです。

ケータイ?
携帯電話って、腕時計のような感覚。ファッションの一部として身につけるようなものだからもっといろいろなデザインができたらいいなーって。そうだ、是非私にデザインさせてください(笑)!

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