Hakata Envoy


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Shigemi Kawahara

日本に何千軒とあるラーメン店の中で『一風堂』ほど人気と評判を得ているところがあるだろうか。オーナーである河原氏が大名に最初の店を出してから19年。彼は新たな試みとして、ラーメンのルーツである中国へと進出した。ー2008年の北京オリンピックまでに60軒を展開するという大きな目標を掲げて。彼にとっての中国とは、ビジネスのための大きな市場というよりも、家族と共に生活する新たなるステージという意味を持つ。福岡を離れ、異国の地で生活をはじめようとする彼の心境に迫ってみた。
編集長/ニック・サーズ

Shigemi Kawahara/河原成美
福岡出身
博多ラーメン「一風堂」を運営する『株式会社力の源カンパニー』代表取締役。1985年に大名の路地裏に最初の「一風堂」を出店後、東京、大阪で展開。全国にファンをもつ人気ラーメン店を築きあげると同時に、”博多ラーメン”ブームを巻き起こした。今年から家族と共に上海へ移住。博多の名物ラーメンを世界に向けて発信するという新たな試みに挑戦。

ホームページはこちら http://www.ippudo.com/
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Q. 今ではすっかり全国区となった「一風堂」ですが、今年はなんと上海進出!というニュースが飛び込んできました。どのようなきっかけで、海外出店を決意されたのでしょうか?
A. 新横浜のラーメン博物館に出店したのが1994年。今年でちょうど10年目になります。‘94に「東京」というマーケットを目指したので、10年目にあたる節目の年に「世界」というマーケットを目指したい!と思ったんです。

Q. どうして上海へ?
A. 上海生まれの社員がいたことから、徐々に向こうでのビジネスを考えはじめていました。実は5年ほど前から中国人と共同出資して、レストランを経営しているんですよ。アメリカなども考えましたが、やはり遠いかなーと。日本にも店はあるのだから、行ったり来たりの生活になることは必至。その点、上海へは福岡からたったの1時間30分!

Q. では2004年、満を持してのラーメン店スタートなわけですね。
A. そうなんです。”78(チーパー)一番ラーメン”という店名で2月にオープンしました。「チーパー」とは「旨い、食べようよ」という意味。何といっても中国の人に食べて欲しいので、覚えやすいネーミングにしました。味は日本と同じトンコツラーメンです。現地の材料を使って日本と同じ味を出すのは至難の業でしたが、そこは長年培ってきた技術力でカバーできたと思います。2月に1号店、3月に2号店、5月に3号店と今年は5~6軒の店をオープンさせる予定です。2008年のオリンピックまでには、60~70軒と展開していきたいですね。

O. 上海へはご家族と共に移住されるそうですね。これからは、私のように「外国人」として、海外で生活するわけですが、不安な気持ちなどありますか?
A. いいえ。特に不安は感じていません。同じ東洋人だからか、それほど違和感はないですね。仕事も日本語しか使わないので。ただ、生活となると多少の不便は避けられないでしょう。これから、子どもたちが学校に入れば、直面する問題は続々とでてくるかもしれません。病院などの緊急時は、言葉も通じないから、大変でしょうね。しかし、それらをぜ~んぶ含めて乗り越えていくことが自分にとっても家族にとっても、チャレンジなのかと。

Q. さすが、前向きな発言!元気なイメージの一風堂は、社長のチャレンジ精神が反映されているんですね。ちなみに”一風堂”の人気の理由を、河原さん自身はどうお考えですか?
A. 以前、人から聞いて感銘を受けた言葉で、「有恒」という仏教用語があります。「有恒」とはただそこに有り続けていくこと。万物はすべて流転していくという考えの「無常」と相反する言葉です。この2つの言葉は相反しているように見えて実は同じではないかと。変わり続けることが有り続けるための唯一の手段ではないかと思うのです。人気があるからといって、いつまでもその人気をキープできるとは限りませんからね。商品はもちろん、接客なども含め、長く愛されるために、よりよい方向へと変わり続けることが大事だと思っています。これも一風堂のポリシーですね(笑)!

Q. ちなみに、河原さん自身が感銘を受けたラーメンってあるのですか?
A. もちろんありますよ。千葉県に「お湯ラーメン」と呼ばれている有名なラーメン店があるんです。店の外にはズラリと行列。店に入るとドカ~ンと大きなたっぷりのお湯が入った釜が目に入ります。店内は満員。お客は釜を囲んでニコニコと楽しそう。しかし肝心のラーメンはというと、お湯、醤油ダレ、チャーシュー、麺というシンプルな組合せ。「ラーメン=スープが命」と思っていたそれまでの概念がガタガタと崩れました。ただのお湯のスープなのに、お客さんが喜んで食べてるというその光景に衝撃を受け、その場の活気にワクワクしたのを覚えています。味はあえてノーコメントで(笑)。

Q. やはり店の命は活気なんだ…と!
A. そうですね。笑顔があり、店に活気があれば、お客さまに何倍も楽しくラーメンを食べてもらえるでしょうから。

Q. 最後になりましたが、長年親しまれた「福岡」についてお聞かせください。
A.「福岡」は長年住んだからこそ、嫌いなところもいっぱいあります(笑)。特にトンコツ以外はラーメンじゃないと思っているところとかねー(笑)! 意地っぱりな性格も嫌いです。反対に、面倒見がよかったり、気が優しかったり、心の温かい人が多いのも確かですよね。これから私は中国で生活していくわけですが、例えば子どもたちが、中国で結婚してずっと暮らすことになってもいいと思っています。私が中国に行くのは、そこにビジネスチャンスがあるからだけではなく、急速に発展するエネルギーが渦巻く街に生きる現地の人にも興味があるからなんです。「アジアの玄関口」と言われる福岡ですが、アジアに近いからこそ、もっとメンタル的な部分で国際人になってもいいのでは?人と人との結びつきができてこそ、本当の意味での玄関口になると思うんですよねー。
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クセ?
耳たぶをひっぱるのがクセ。人と話をしていて乗ってくると、両手で両方の耳たぶをギューッと引っ張るんです。頭がスキッとさえて、また話がはずむんです。

ケータイ?
携帯電話で国際電話ができると知った時は、驚きましたねー。中国にいれば、日本にいる両親のことが気になります。ふと「今どうしてるだろう?」と思った時にすぐに声が聞けるのって、安心感につながりますよね。

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