熊本県 山鹿灯籠まつり


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闇夜にゆらめく幻想の灯りの祭典

 夏、といえばなにはともあれ祭りである。九州の祭りというと、山笠に代表されるような気勢を上げて勇ましく行う男の祭り、というのが多いが、そんななかで女性を主役とした、なんとも優雅な祭りが熊本に存在する。熊本夏の三大祭りのひとつ、「山鹿灯籠まつり」がそれである。
「灯籠」というのは本来、木や金属の枠に紙を貼った中にあかりを灯す器具のことだが、この祭りで用いられる「山鹿灯籠」は福岡・八女産の和紙と糊だけで作られた伝統工芸品。有名な神社や城をかたどった精巧な灯籠(単なるミニチュアではなく、独自の寸法で作成してある)を街中に飾り、最終日の午前0時に地元の大宮神社に奉納する。そして見所はなんといっても、灯籠を頭の上に載せた千人もの女性が輪になって踊る「千人灯籠踊り」だ。照明を落としたなかで女性たちの頭上の灯りがゆらゆらと揺れ、それがいつしか光の輪となって8月の夜気のなかを波のようにゆらめく様はとても幻想的である。
 ところで踊り手たちの頭上に載っている「金灯籠(かなとうろう)」。顔の大きさほどもあるこの灯籠、さぞ首が疲れるだろう、と思いきや、重さは生卵3個分だとか。その製作には高度な技術と10年余りに渡る修行が必要とされ、その技は室町時代より脈々と受け継がれているのである。そんな伝統の粋を間近で堪能するのもこの祭りの楽しみだ。また、祭り前日には菊池川の河川敷で4,000発もの花火が打ち上げられ、山鹿恒例の祭りの気分を盛り上げる。
その優雅な様子が年々評判を呼び、毎年30万人以上もの観光客が集まるという。早めに会場に出かけて山鹿の町々の飾り灯籠巡りをしてみるのもおすすめだ。闇に浮かび上がる光の渦が、夏の終わりを彩る優美な祭りである。

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