長崎 精霊流し


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年に1度の夏の夜、心に残る絢爛絵巻

「チャンコンチャンコンドーイドイ…」街中に大きく響き渡るかけ声、止まない喧騒、そしてごったがえす人の波。毎年8月15日、きまって長崎市に見られる光景だ。この日行われる”精霊流し”という伝統行事、初盆の御霊を船に乗せて、極楽浄土に送り出すことを目的に催されるもの。”精霊流し”と聞けば、たいていの日本人が思い浮かべるのは、小さな船に灯りをともしたちょうちんを置いて流す、といったしみじみとしたイメージではないだろうか。だが、この地・長崎のそれは各地の風習とはかけ離れて、独特の習わしを持っていることで知られているのだ。
 お盆の最終日。夕闇が迫る頃に、あちらこちらから聞こえてくる鐘の音、それが出発を知らせる合図となる。亡くなった人の思い出を乗せた精霊船は、片手で抱えられるほどの小さなものから10メートルを越す大きなものまであり、竹や板、ワラなどで趣向を凝らして作られる。また、船首(みよし)と呼ばれる長く突き出した部分には家紋や家名、町名が大きく記される。故人と親しかった人たちによってかつがれたそれらの精霊船は、鐘の音とともに行列の中へ。帯をなす無数の行列は夜遅くまで続き、街中を光の帯に変えていく。華やかな中にもどこかもの悲しさを感じさせ、長崎独特の情緒を醸し出す…のだが、独特なのはそれだけじゃない。驚くのはなんといっても、あちらこちらから聞こえる爆竹の音! 音! 音! おそらく1年でいちばん花火が消費される夜だろう。目にも耳にもとにかく賑やか、華やかな長崎のお盆。この夏の風物詩を体験しておいて損はないはずだ。ただし、耳栓を持参することをオススメする…。

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