安兵衛


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西中洲のほかほかおでん 丁寧な味付けのやさしい料理

西中洲の小さな路地。店の前からすでに温かい冬の香りが漂い始め、扉を開けると、黒光りする檜のカウンターと穏やかな店主の笑顔に迎えられた。席数20数席というこぢんまりとした店内で、藍色の半被に年季の入った前掛け、雪駄できめた足もとから、店主は何とも粋な風情を漂わせている。先代が昭和6年に満州で始めた店を受け継ぎ、西中洲に店を構えて早40数年。昆布とカツオ、濃い口醤油のシンプルな味付けのおでんは長い時を経ても変わることなく、安兵衛の味として愛され続けている。
 直径50cmほどもある円形の銅鍋の中は、んっ?と凝視してしまうほど真っ黒なダシと黒いだいこん、そして殻付きの卵が浮かぶ。普段、見慣れたおでんとは様子が違い、お決まりのがんもやきんちゃく、スジも見あたらない。「おでんは煮込み料理じゃないから」という小笠原さんの言葉によると、ここでいうおでんとは、一つの出汁の中でいろんな具材の味を楽しむものなのだという。出汁が具の味をかき消すことも、具の味が出汁にしみ出てしまうこともない。鍋で煮込むのは出汁の味に影響しない2種類に限定して、常に変わらぬ味を守り続けている。なんでも、営業が終わると出汁と2種類の具材を分けて冷蔵庫に寝かせるのだそうだ。そうすると必要以上に味が染みこまず、ほどよい味加減になるという。ちなみに、だいこんは2日目、卵は4日目に食べどきを迎えるのだそうだ。だいこんと卵以外の具材、例えば5種類のきのこが入ったきんちゃくやいわしや穴子のつみれ、ホタテのはんぺんなどは、注文が入ってからほどよく温める程度。見た目の色とは対照的に、口に入れるとあっさりとやわらかな風味が広がる上品なおでんにファンは多い。

きりっと背筋を伸ばした出で立ちと穏やかな口調の店主・小笠原さん。「毎日同じことをすれば味は守れるはず」とさらり。


福岡市中央区西中洲2-17

092-741-9295

<営業時間>18:00~23:00
<休み>日曜日
<料金>だいこん¥200、がんも¥400、つみれ(穴子)¥400、すじ¥900、キャベツ巻き¥300、卵¥200、日本酒(1合)¥600、焼酎¥500~、ビール¥500

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