楽器ができれば、チンドン屋になれると思ってた。甘いよね。


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安達 ひでや
1964年生まれ。熊本出身。持っている楽器は100種以上。とにかく練習好きでプライベートな時間も楽器の練習をしているそう。チンドン屋の半生をつづった本「笑う門にはチンドン屋」やCD「楽しいチンドン・むかしのうた」も好評発売中。
アダチ宣伝社ホームページ www.try-net.or.jp/~adachi

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チンドン屋って今時、珍しいですよね。
そうでしょうね、衰退産業ですから(笑)。昔は福岡にもたくさんいたのに、一度全然いなくなって、11年前に僕が始めてから九州でチンドン屋が復活したんです。チンドン屋はもともと大阪で発祥し、東京で最も栄えた歴史を持ち、それ以外の地域はみんなどちらかの真似ですよ。東京は江戸前の粋の良さがあり、大阪はしゃべりも面白い、みたいな特徴があって、どちらも参考になりますね。今九州に4組、うち3組は福岡ですけど、九州の歴史はアダチ宣伝社の歴史と同じで11年そこらしかないんです。

もともと始めたきっかけは何だったんですか?
20歳で福岡に来てロックバンドに夢中になり、ちょっと人気が出て東京まで行ったけど泣かず飛ばず。結局戻ってきて、ラジオのパーソナリティーに抜擢されたけど29歳でクビ(笑)。そこでストリートパフォーマーに転向したら、たまたまチンドン屋の仕事が入ったんです。ところがこのチンドン屋という仕事、始めてみたらものすごく奥が深かった、みたいな感じですね。

それは具体的に言うと?
まずチンドン屋はパフォーマーと違って、自分を見せることが仕事ではない、ということ。クライアントのためにビラを配って、人を集めることで報酬がもらえる、言わば広告代理業なので、魚屋とデパートではアピールの方法も違うし演奏する曲も違う。楽器はひとつでも多くできた方がいいし、一輪車だって乗れた方がいい。また衣装にも一つひとつ意味があって、町の商人とお侍さんで、帯の結び方が違うんです。踊りや歌舞伎のことも勉強しないといけないし、あとはチンドン太鼓も作んなきゃいけない(笑)。

チンドン太鼓って、自分で作るんですか?
そうですよ。これ実は画期的なドラムセットなんです。それまでは鉦の人と太鼓の人は別々だったのに、この太鼓ができてからひとりで「チン」「ドン」できるようになって「チンドン屋」と呼ばれるようになった訳で、それまでは広目屋って言われてたんですよ。長いチンドン屋は40年も50年も歴史があって、初めて全日本チンドンコンクールに出場した時は、全国から集まったプロのチンドン屋に衝撃を受けましたよ。

チンドン屋にコンクールがあるんですか!?
毎年富山県で開催されていて、チンドン業界では有名な51年の歴史を持つコンクールです。初めは東京の親方に「どうせ2~3年でいなくなる」と思われていたんでしょうね、全く相手にしてもらえなくて、とにかく一人前になることだけを目標に続けていたら、今年ついに優勝することができました。でも業界の中ではまだまだ若手なので、勉強することは山ほどありますよ。

福岡を拠点にしていることについてはいかがですか?
福岡はとにかく女性が元気。地方からも色んな人が集まるからエネルギーが溢れてる。この10年で街の景色がどんどん変わりながら発展してきた街だから、福岡にいると、この街と一緒に自分も成長してきたんだなーって実感できますね。

海外出張などはあるんですか?
これまでに韓国、香港、パリへの依頼がありました。日系デパートのオープンイベントなどの宣伝部隊ですね。面白かったのは、パリでチンドン屋の格好のままカフェに入ったら、店員の態度が超VIP対応に変わったこと。役者かなにかと勘違いしたんでしょうね(笑)。

チンドン屋の仕事をやっててよかったと思う時は?
怖い顔したおじさんが僕を見て「ぷっ」て吹き出したり、三橋美智也のメロディーが懐かしいと言っていきなり涙ぐんだりする人に会った時ですね。チンドン屋をやっていると道ばたの喜怒哀楽にたくさん出会うんです。

これからの目標は何ですか?
実は僕自身はチンドン屋を見て育ってないんですね。なのに今の子どもたちは、僕を見て育つでしょう?チンドン屋って人をバカにする時の代名詞みたいに使われるから、そういうイメージを払拭させるためにも、僕がこの職業を正しく伝えていく必要があるんじゃないかなって思います。

最後に、安達さんが11年間続けてこられた理由は何でしょう。
うーん、初めは楽器さえできればチンドン屋になれると思ってたんだから、甘いよね(笑)。もちろん今でも一人前だとは思ってないけど、少なくとも九州の先頭を走っている訳だから中途半端でやめる訳にはいかない。そして、九州の活性化とともにチンドン屋を復活させることができるといいですね。

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