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久留米絣 – 受け継がれる伝統と発展し続けるスタイル


筑後地方に伝わる綿織物、久留米絣。現在は主に福岡県久留米市、福岡県八女郡広川町、福岡県筑後市で作られています。絵柄を想定して先に染めた綿糸を織るため、微妙なズレが生じて独特のかすれ模様を作り出します。これが久留米絣の特徴のひとつであり、魅力です。この染色と織の技法は、今から約200年ほど前、当時12歳だった井上伝という機織りが得意な米屋の娘の好奇心から誕生しました。

もちろん、世界的にも、絣はイカット(インドネシア語)として知られていますが、「久留米絣」は、大陸から渡来した技術ではなく、自給自足の時代の日常の中で独自に発展を遂げた織物であることが大変ユニークな存在です。

久留米絣が誕生する以前の筑後地方は、筑後川が育む豊かな土壌のもとで「藍」は大阪に出荷するほどの作付けがなされ、「綿花」も栽培が行われていました。しかし織物は、当時一般的だった各家庭で自給自足的に生産される程度、もしくは農閑期の副業として生産される程度でした。まだ紺色の無地か縞模様の着物が普段着であった時代に、井上伝が試行錯誤しながら作りだした雪が舞うような一面に白い点が散る模様の久留米絣が、瞬く間に評判になったのも当然かもしれません。その後、久留米絣は、改良工夫によって、大柄、小柄絣、そして絵絣等、他に類のない特徴的な技術をもつようになり、行政も産業化を奨励したため、久留米絣は産業として発達します。

現代の暮らしに合う製品が多数生まれています。

 

高い技術を要する久留米絣の中でも、経緯絣(たてよこかすり)で作られているのが多い博多祇園山笠の法被は、難しい部類に入ります。どこの流れの法被をどこの織元が作っているかは公開されていませんし、一般で購入することはできません。

 

久留米絣のカテゴリ

<手織り>重要無形文化財の久留米絣

①手括りによる絣糸を使用すること ②純正天然藍で染めること ③なげひの手織織機で織ること。この条件を満たして検査に合格した織物だけが「重要無形文化財」の証紙を貼られて市場に出ます。非常に厳しい条件のため、限られた数しか織られない貴重なものです。


<手織り>伝統的工芸品の久留米絣

国の伝統的工芸品として指定を受けている久留米絣の品質の維持および向上のため、久留米絣協同組合独自の検査基準を設け、クリアした手織りの久留米絣に対し「伝統的工芸品」の表示行ないます。

①先染めの平織とすること。②絣糸は、経糸および緯糸または緯糸に使用すること。③緯糸の打ち込みには「手投杼」または「踏み木による飛杼」を用いること、等。

 

<機械織り>

織の工程を機械で行い、手織りと同様に杼で緯糸を通すシャットル織機を用いる事で質感のある反物に仕上げています。機械織りでも経糸と緯糸の柄を合わせるのは非常に難しく、職人の高い技術が必要です。最近では、伝統的な幾何学模様や藍染めだけではなく化学染料を使用し、モダンな柄、ポップな色合いの製品も多く作られています。

久留米絣に触れることができる場所など

久留米かすり
藍・愛・で逢いフェスティバル

日本最大級の久留米絣の祭典。久留米絣織元、問屋などが出店し、久留米絣を使った洋服や小物、反物やハギレなどが特価で展示販売される。久留米絣の新作発表や、ファッションショーも行われます。会場は久留米絣でおしゃれした多くのファン賑わい、様々な久留米絣を見比べることができるのもこのイベントの魅力の一つ。

・2019年3月16日(土)・17日(日)
・10:00〜17:00
・入場無料
・会場:地場産くるめ(福岡県久留米市東合川5-8-5

絣の里巡りin筑後
主要産地の一つである筑後市にある久留米絣工房を一般開放する、春と秋の年2回開催される恒例イベント。絣の里を散策しながら点在する工房に立ち寄り、匠の手仕事を間近に感じることができます。絣の手織り体験(無料)や藍染体験(有料)の体験、絣製品等も産地価格で購入可能。無料レンタル自転車や、久留米絣の着物レンタルの他、各工房を巡る無料ワゴンバスの運行もあり、久留米絣の里「筑後」を一日ゆっくり楽しむことができます。

・2019年6月1日(土)、2日(日)|秋開催分は日程未定
・10:00〜16:00
福岡県筑後市北西部一帯の絣工房、他
・最寄駅:JR鹿児島本線「羽犬塚」駅から30分おきに無料シャトルバス運行あり
・本部:熊野区公民館(福岡県筑後市熊野730)

広川かすり祭
着て、見て、触れて楽しむ、久留米絣。12の久留米絣工房が集まる広川町で開催される秋のかすり祭り。工房巡りや久留米絣製品のショッピング、工房での藍染め体験や手織り体験、特産品である八女茶の試飲会に加え、優勝者に絣の反物が贈られる「久留米絣の反物巻き競争(参加無料/当日参加受付)」は祭りの中でも一番盛り上がりを見せる。メイン会場を起点に無料のシャトルバスも運行されます。

・2019年秋(日程未定)
・9:00〜17:00
・入場無料
・広川町産業展示会館
福岡県八女郡広川町大字日吉1164-6

久留米絣資料館
久留米絣の始祖・井上伝さん愛用のメガネをはじめ、貴重な資料、織物が展示されており、久留米絣の実演ビデオなども見られる。絣の手織り体験(要予約)も可能。隣には久留米絣の反物、洋服、バック、小物の他、福岡県南・筑後地方の特産品展示即売コーナーもある。

・営業:10:00〜17:00
・休館:年末年始
・地場産くるめ(2F)
福岡県久留米市東合川5-8-5
0942-44-3700

Originally published in Fukuoka Now Magazine (fn243, Mar. 2019)

Category
Art & Culture
Kurume
Published: Mar 7, 2019 / Last Updated: Mar 7, 2019

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