より生き生きとした感覚を味わえるのは旅の醍醐味。今回のFukuoka Nowが考える旅のスタイルはサイクリング！中でも、持ち運びしやすくて便利な”折り畳み自転車”に注目しました。
環境にもやさしく、サイコロを振って進むような、その瞬間を楽しむ大らかな旅ができる自転車、加えて英語圏では通称「フォルディ」と呼ばれる折り畳み自転車は、コンパクトに折りたたむことができるので、都市部や田舎などが混在する九州の多様な地理に合わせて移動手段を選ぶことができます。また、専用バッグ（輪行バック）に折りたたんで収納すれば、ほとんどの公共交通手段での持ち運びが可能です。突然の雨やハプニングでも、タクシーのトランクに入れて移動もできるので、何かと安心です。
旅にも便利なようにできるだけシンプルに、メンテナンスも容易に作られたフォルディは、まさに旅の相棒。今回は、移動そのもの、そして九州らしさを楽しむフォルディでの旅を紹介します。
公共交通機関を組み合わせて移動を楽しむ3泊3日の旅
出発は博多港。フェリーで五島列島の小値賀島へ向かいます。福岡と五島列島を毎日1往復する定期フェリー「太古」は、ベイサイド博多にある博多ふ頭から夜11時45分に出港し、早朝あたりから五島列島の4港（宇久 – 小値賀 – 青方 – 奈留）に寄港しながら翌朝8時15分に五島列島の最大の島・福江島に到着します。
大小17の島々で形成される人口2,200人ほどの小さな島・小値賀島が最初の目的地です。約5時間の船旅なので朝4時40分着ですが、小値賀港ターミナルには男女別の無料休憩室がありますので、到着後は横になって休むことができます。
日の出の時間が近づいたら、小値賀島の東にある地ノ神島（ちのこうじま）神社へ向かいます。遣唐使の航海の安全を祈ってつくられたといわれるこの神社は、対岸の野崎島にある沖ノ神嶋神社（おきのこうじまじんじゃ）と向かい合っています。
3本の鳥居のうち、1本は階段を降りた海岸に立っています。島内はまだどこも開いていないので、コーヒーやパンを出発前に準備して行くのがお勧めです。
小値賀島上陸後、初めて声を交わした島民はベルギー出身。穏やかな小値賀島で子育てをするために移住してきたのだそう。
休憩に立ち寄った「柿の浜海水浴場」は驚くほど美しく穏やかです。
圧巻の景色が広がる五両だき（Goryo Criff）。小値賀に行ったらぜひ訪れたいスポットです。
火山でできた小値賀島。島内に約20カ所ある噴火口の一つを、波が長い時間かけて削って作り出した景色です。ちなみに五両だきの「だき」とは小値賀の方言で「崖」を意味します。
小値賀港ターミナルから25分程の場所には、赤い砂浜の海岸があります。その名も赤浜海岸。鉄分を多く含む赤い砂・砂利は火山島特有のものだとか。
また、九州の西端に位置する小値賀はサンセットも必見です。小値賀島からさらに西にある斑島（まだらじま）へ橋を渡って行くと、辺り一帯が東シナ海へ沈む壮大な夕陽の光景に包まれています。
小値賀には、島の観光や自然体験をワンストップで対応してくれる組織「おぢかアイランドツーリズム」があります。港のターミナル内に観光案内所を兼ねた事務所があり、島旅コンシェルジュと呼ばれるスタッフが丁寧に対応してくれます。
フェリーターミナルにはレンタサイクルサービスもあるので、自転車を持って行かなくても、起伏が少なく約4時間で1周できる小値賀島でのサイクリングを楽しむことができます。
おぢかアイランドツーリズム
レンタサイクル：6:30〜18:00
https://ojikajima.jp/travel/15711.html
島旅コンシェルジュのVictoriaさんはリトアニア出身。島の人たちからも愛される彼女は、移住者視点で誰よりもわかりやすく島のことを紹介してくれます（日本語も英語も完璧！）。彼女の案内で、島の中心部・笛吹地区を紹介してもらいました。
Kyushu Live（九州ライブ）
LIVE: Ojika Island in Goto, Nagasaki / 小値賀島 – Walking Tour!
立ち寄りスポット
・鰹の生ぶし / 丸仁水産の橋本仁平さん
・小値賀島で100年つづく活版印刷所「晋弘舎」
・小値賀に富をもたらした豪商・小田家の屋敷「小値賀島歴史民俗資料館」
・港町の路地に面した漁師が暮らした古民家ステイ「先小路（Sakishoji）」
宿泊は、海を正面に臨む一棟貸切の宿「オヂカノオト」。島の中心地「笛吹商店街」から、細い路地を2分程奥へ歩いた場所にあります。
以前からここにある建物をリノベーションしたこの宿は、土間づくりのダイニングキッチンや、大きな木が茂る屋外テラス、2階にはソファーから海を眺めるためのリビングと、畳間のベッドがあり、快適すぎるステイが約束されます。朝日から月夜まで、一面に広がる海をシネマのように眺めて過ごす贅沢は、感動ものです。
おはよう！そしてまたね、小値賀島
行き交う人と挨拶し、路地を自転車で散策し、夕陽を見るために隣の島までひとっ走り…。月明かりに照らされる海を眺めながら眠りにつく…。たった一泊しかしていないのに、もう恋しい小値賀島。
ターミナルへ向かう途中、通りに集まっていた女性たちに、パン屋さんがあることも教えてもらいました。「そこを曲がると焼き立てパンがあるわよ！」
今日は小値賀からフェリーで中通島へ向かいます。この旅で一番ハードなサイクリングになる予定です。中通島を縦断し、橋を渡って次なる目的地（福江島）に向かう船が出る若松港が本日のゴールです。ちなみに、上五島と呼ばれる中通島と若松島は、飛行機の直行便はなく、福岡か長崎から船でしか行くことができない島々です。
「とにかく綺麗」といろんな人に勧められた、上五島を代表するビーチ「蛤浜海水浴場」。澄み渡る遠浅の海と白い砂浜が美しい蛤浜は、港からも近く、メイン道路からもすぐの場所にあります。
細長い地形の中通島と若松島は、急峻な山々が連なり、平地は海岸沿いにわずかに広がっている程度。つまり、自転車での走行には中々ハードな道のりです（Eバイクだったら！と何度思ったことか…）。
江戸時代の禁教令下にキリシタンが移り住んだ五島列島には、教会が点在します。
また、全国に34カ所ある国立公園の一つ「西海国立公園」に含まれる特別な地域でもあります。中通島と若松島の間を南北15kmにわたって30の島々が複雑に入り組む「若松瀬戸」と呼ばれる一帯は、景勝地の一つ。二つの島を繋ぐ延長522mの若松大橋も、自転車でゆっくり渡ります。
約5時間のサイクリングを経てようやくたどり着いた宿。お世話になるのは「田舎の親戚の家に遊びに来たような、ホッとできる民泊」をコンセプトに、地域の60歳以上の女性たちが立ち上げた団体「五島列島B&B」に加入する民泊「すずめのお宿」です。あたたかな笑顔と、手作りのご馳走に迎えられ、ハードだった1日の疲れも吹き飛んでしまいます。
五島列島B&Bは、夕食＆朝食付きでひとり一泊7,500円。地域の食材を使って手作りされた豪華な家庭料理にお腹も心も満たされ、大満足です。出発の際には、自転車で旅する私たちを気遣って、甘いものが欲しくなるでしょう、と郷土菓子「豆羊羹」と五島うどんをお土産に持たせてくれた宿のお母さん。親戚の家に遊びに来たような…というコンセプト以上のあたたかなステイでした。
島特有の静かで澄んだ朝の空気をたっぷり吸い、若松港へ向かいます（港までは下り坂だけ！）。
若松港からは、高速船で離島巡りの最終目的地・福江島に向かいます。船上からの景色も美しいので、お見逃しなく！
福江港では長崎市内へ向かう船に乗り継ぎます。乗り継ぎ時間は2時間半。フェリーターミナル近くには、自転車で5分程の場所に、福江城跡や福江武家屋敷通りがあるので、観光にもぴったり。ターミナル内にはコインロッカーがあるので、重たい荷物は預けて、身軽なサイクリングもお勧めです。
なぜなら、自転車で1時間弱の場所に福江島のシンボルであり、西海国立公園の代表的な景勝地の1つである鬼岳があるんです。体力に自信がある人は、ぜひチャレンジを！
鬼岳は標高315mとはいえ、ターミナルからは坂道が続きます。フェリー出発をタイムリミットに気合を入れつつ到着した鬼岳は、それまでの疲れが吹き飛んでしまうほどの景色が広がっています。ターミナルまでの復路は下りばかりなので、行きより時間がかからないのでご安心を！
予定外に加わった鬼岳までのサイクリングが、思わぬクライマックスをもたらしてくれた五島列島巡り。ここから長崎市までのフェリーでの移動が、ちょうど良い休憩です。
港から入る長崎市。100年に一度の変革、と言われる大規模再開発中の長崎駅までは、長崎港から10分ほどの距離です。途中、出島や眼鏡橋など、観光名所巡りを楽しむことができます。
最後は2022年秋に開通した西九州新幹線で博多へ戻ります。長崎駅でお弁当を買って乗り込みます。自転車は輪行バックに入れれば持ち込みは無料ですので、できるだけ早くに乗り込んで、荷物置き場をキープすることをお勧めします。
これで一安心！快適な車内で乾杯です。
3泊3日の自転車の旅 in 九州は、短い期間ながら、充実感は海外旅行並みです。
九州は、ゆっくり周遊するのに適した安全な島です。自転車だけで巡るのもいいですし、列車やフェリー、新幹線などと組み合わせるのもお勧めです。
旅程（2023年10月時点）
DAY 0
福岡出発
23:45 出発（博多港〜小値賀）
太古フェリー（時刻表）
大人片道¥4,000＋¥1,090（自転車料金）
オプション¥5,200（ツインルーム1室）
*バイク・自転車（折りたたみの状態も含む）は特殊手荷物扱いなので予約必須
*輪行バッグに入れた自転車でも室内への持ち込み不可。
*特殊手荷物は乗船時間より早くに預ける必要あり（博多港21:00～23:00）
DAY 1
小値賀島
04:40 到着（小値賀港）
04:45〜08:00 日の出目指して神社へ
09:00 自転車でぶらぶら観光
ライブストリーミング with Victoria
12:00 昼食
13:30 自転車観光
14:00 チェックイン（オヂカノオト）
18:00 夕食
DAY 2
小値賀島から中通島＆若松島へ
08:00 チェックアウト
09:00 自転車観光（1.5時間）
10:55 高速船で中通島へ（*2023年12月にダイヤ変更前時間です）
12:05 有川港到着
12:15〜17:00 有川港から宿泊先までサイクリング
17:00 チェックイン（五島列島B&Bの民泊「すずめのお宿」）
18:30 宿にて夕食
九州商船フェリー
小値賀港〜有川港（高速船）：大人片道¥2,670
*折りたたみ自転車は輪行バックに入れ規定サイズ内であれば無料
*持込手回り品は3辺合計1.58m以下かつ重量が10kg以下の物を1人2個まで
DAY 3
若松島から福江島、長崎市、そして福岡へ
07:00 朝食＆チェックアウト
07:20〜07:40 土井ノ浦港まで2.6km、20分のライド
08:10 フェリーで福江島へ（奈留港経由）
09:15 福江港到着
11:45 福江港出発
16:05 長崎港到着
16:05～18:13 長崎市で自由時間。JR駅までのライドは10分（1.4km）
18:45 西九州新幹線出発：長崎駅〜博多駅
20:09 博多駅到着
五島旅客船
土井ノ浦〜福江（高速船ニューたいよう）：大人片道¥1,390＋¥530（自転車持ち込み）
九州商船
福江港〜長崎港（フェリー）：大人片道¥4,080（2等）＋¥840（自転車持ち込み）
*福江島〜長崎はジェットフォイルも就航していますが、折り畳み自転車を含む自転車の持ち込みができません。
JR九州
長崎〜博多（西九州新幹線）大人片道指定席¥6,250
*折りたたみ自転車は輪行バックに入れれば無料
