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福岡でジャズに酔いしれよう

ャズと聞いて、ちょっぴり大人のムーディな雰囲気を想像してしまう君も、街角での賑やかなジャズフェスティバルを思い起こすあなたも、福岡在住のオーストラリア人が見た日本、そして福岡のジャズシーンについてどう感じるかな?きっとまだ知らないジャズと福岡の関係を発見できるに違いない。
日本でのジャズ現象

小規模なアングラ系からミリオンセラーのジャズまで、幅広くある日本のジャズシーンを一言で語るのは難しい。けれどはっきり言えるのは、今の日本の音楽シーンにジャズが与えた影響は計り知れないということ。人気ジャズミュージシャンは不動のアイドルとなっているし、ジャズ初心者ですら、あちこちで生のジャズ演奏に触れられる環境にある。特に福岡では気取らずに日本風のジャズが楽しめる。現在の日本のジャズは、禅のミニマリズム、R&B、ダンスミュージック、ビッグバンドミュージック、エキストリームミュージックの影響を受けながら進化を続けていて、多彩で奥も深い。そして何と言っても、日本のライブハウスやレコードショップのフレンドリーさと音楽に対する情熱は、世界に類を見ないものだと思うよ。


福岡は多くの芸能人やミュージシャンを輩出する土壌があるけれど、ジャズも例外ではない。大小様々なジャズライブハウスや、多くのジャズミュージシャンによって活気に満ちたジャズシーンが作られていて、生のジャズを毎夜聴くことだって可能だ。福岡にいれば有名なジャズ演奏から、飛び入り参加できるような気軽なジャズまで、幅広く楽しめるんだ。ここで隅々まで細かにレポートすることは出来ないけれど、もし君が少しでもジャズシーンをかじって好きなものを見つけたんだったら、絶対に手放しちゃだめだよ!
日本でのジャズ変遷

ジャズは20世紀の初頭、日本のクラブで演奏をしていたアメリカ人の船員たちにより持ち込まれた。最初は口伝えで、それから蓄音機、ラジオ、印刷物を通してジャズは日本全国にセンセーションを巻き起こした。日本の伝統文化を破壊する西洋の退廃的文化として脅威と見なされたりもしたけれど、その議論はかえってジャズの魅力を増す結果となり、若者の間で驚異的な人気を博すことになる。太平洋戦争の間ジャズは政府によって抑圧されたが、アメリカの占領時代に息を吹き返し、以降、日本のジャズは進化を続けている。

日本人ミュージシャンはジャズを自分たちの好みに合わせてアレンジするのもうまい。例えばミュージシャン兼作詞家の不破大輔は、歴代の参加者100名を超える巨大バンドを結成し、ジャズとロック、そして日本舞踊を組み込んだ多彩な音楽性を内包している。その巨大バンド「渋さ知らズ」は日本やヨーロッパでライブ活動を中心に活躍中だ。他にも60、70年代のフリージャズ運動時代の演奏の中には日本人好みのアレンジが多く見られ、高柳昌行や阿部薫、吉沢元治といったミュージシャンたちは、伝説のレコーディングと過激なパフォーマンスで有名だし、もちろん現在もなお広がり続けている。最近はエレクトロニカ、ハウス、ヒップホップとのコラボレーションで成功した「nu-Jazz」などがランキングチャートを賑わせている。国際的に活躍する日本人ジャズミュージシャンの凱旋ライブも人気が高く、上原ひろみのような若いミュージシャンは、海外でのCDセールスも好評な上、日本国内でのライブチケットはたちまち売り切れるほどだよ。
カフェやレストランでも、時にイラつくポップスの代わりにジャズを流しているところも多く、日本の文化に定着した感のあるジャズだけれど、まぁ、人の好みは多種多様だからね。何とも言えないけど、ボクにとって福岡のジャズは音楽であると同時にコミュニティでもあるから、気に入ったバンドの成長を間近で見届けながら、仲間と昔ながらのジャズを楽しんだりしているよ。
本物に触れるべし

福岡のジャズ人気は60年以上続いていて、 80年代まではキャバレーのジャズバンドが福岡のネオンを彩っていたけど、今では各ジャズクラブが地元のジャズミュージシャンを応援している。ボーカル、スウィング、ソロ、デュオ、トリオ、ビッグバンドといった様々なジャンルのジャズが日々演奏されているんだ。

昔から何十年も営業を続け、コアなファンから初心者に至るまで皆の憩いの場となっているクラブも多い。Jabや Riversideなどの老舗のクラブでスタッフとジャズ談義に花を咲かせるのも良いし、山下洋輔、マイルズ・デイヴィス、ゲリー・ムリガン、リー・コニッツといったスーパースターの来福ツアー話を聞くのも面白い。ボク自身も福岡で、オスカー・ピーターソン、ウェイン・ショーター、エルヴィス・ジョーンズ、マコイ・タイナー、チャーリー・ヘイデン、フレディ・ハバード、ハービー・ハンコックのパフォーマンスを見る幸運な機会に恵まれたよ。


福岡の有名なジャズクラブでは、スウィング、ビッグバンド、ビーバップ、フリージャズ、ヴォーカル、フュージョン、ラテンジャズ、アヴァンギャルドなど、様々なスタイルのジャズが演奏されているから、ある晩はヴォーカルジャズを堪能し、その翌晩は重厚なフリージャズを楽しむことだって可能だ。福岡はコンパクトな街なので、主要なジャズクラブをハシゴできる。スタッフがみんな流暢な英語を話すとは限らないけど、温かい歓迎と素晴らしいサービスでもてなされること間違いなしだよ!


最近のミュージシャンはレコーディングや音楽のリリースにDIY(何でも自分でする)的スタンスをとっていて、メージャーレーベルにプロデュースされるよりも、自分自身を表現してローカルで認められることの方を大切にしている傾向が強いんだ。若い世代は地元のクラブでベテランの演奏から学びとり、独自のスタイルを築き上げていく。そんなジャズクラブで、今何が流行っているか知るためには、とにかくまず足を運ぶことから。演奏前のオープンマイクで誰を捕まえられるかはお楽しみだ。
日本特有のジャズ喫茶

日本特有のジャズ文化といえば「ジャズ喫茶」。ジャズ喫茶はどこにでもあり、広さはバーとカフェの中間くらい。そこで客はジャズだけを聞くことができるんだ。大抵は大のジャズファンが運営していて、カウンター後ろには膨大なレコードやCDが整然と並び、お薦めの曲やリクエスト曲が流れている。中にはジャズライブを聴かせるジャズ喫茶もある(スペースの問題でデュオやトリオに限られるけどね)けど、その昔ジャズ喫茶は、自分でレコードを買えない人が集まって音楽を聴く溜まり場だったんだ。


福岡にはCombo、Jab、Brownieといった老舗のジャズ喫茶がある。一度足を運ぶ価値は大いにある。中にはジャズに集中するために大きい声で喋ることが禁止されている店もある。そんな店では流儀に従って会話を慎み、マスターお薦めのジャズに耳を傾けることに集中しよう。どのジャズ喫茶でもまずは快適な席を探し、美味しい(あるいは濃い)コーヒーを頼み、マスターの選曲やジャズ談義を楽しむことだね。ジャズへの興味の程度は違っても、皆がジャズを楽しみ、経験できるのがジャズ喫茶なんだ。

By シェイン・ボーデン
シェインは福岡市に住むジャズファンのオーストラリア人。アマチュアミュージシャンでもあり、イベントオーガナイザー、学芸員の顔ももつ。

Originally published in Fukuoka Now magazine (fn123, March, 2009)

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Fukuoka City
Published: Mar 1, 2009 / Last Updated: Jun 13, 2017

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