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食べ物オタクの国民性

ャガイモにチャイブを加えれば洗練された食事とされ、ジャムサンドウィッチが完璧な昼食として受け入れられている、ボクはそんな国から、ここ日本にやってきた。もちろん福岡の小学生たちが食事の後におやつとして食べる感覚ではなくって、ジャムサンドがメインだよ。食後にまだ何か物足りない、と感じた時にチップスとジャムサンドがあればご馳走気分が味わえる、そんなお国柄さ。
日本で長く過ごしてみて気がついたんだけど、この国は食をとても重要視しているよね。もっとストレートに言うと、異常なまでの執念をもってるようだよ。英国で食に興味をもっている人は、電車マニアとかフーリガンみたいに稀な存在だけど、日本人は全員が食マニアなんじゃないか?とすら感じるよ。
先月、英国にいる姉に日本の雑誌を送ったんだ。今は円高で日本に来られないから、福岡について教えるためにローカル誌を送ったよ。しかし、その雑誌ではなんと12ページに渡って、人々の食事姿が掲載されていたんだ。レシピなど役立つ情報は一切無し!美しくセッティングされてはいるものの、カメラマンの撮影タイミングを待てないのか、ガツガツと食事をしている男性が写っているだけ。日本人はこの情報誌をどうやって楽しんでいるんだい?


ボクは教師として、生徒たちが視野を広げ、様々な場所を訪れて、そこで何をしたいのかを見つけてほしいと思っている。なのに彼らときたら、イタリアでピザを食べたい、ニューヨークに行ってハンバーガーを食べたいとか…!エンパイアステートビルからの景色なんてそっちのけなんだ。ボクがニューヨークについて尋ねられたら、博物館やアートギャラリー、そしてセントラルパークなんかを想像するんだけど、生徒たちは大きなリンゴを想像しているんじゃないかな?彼らときたら、昼食と夕食の間は数秒単位で腕時計を何度も見ながら不機嫌そうに座り、次の食事までイライラしているかのようだよ。
逆にボクが日本国内を旅行する際に日本人にお薦めを尋ねると、いつも答えは決まって食べ物についてばかり。「大阪へ行くの?たこ焼きは絶対食べなきゃ!」「札幌?カニがお薦めよ!」もしカニを食べたくなかったら?「それでもカニは食べたほうがいいよ。」とくる始末。日本人に旅先での写真を見せてもらえば、少なくとも3分の1はご飯を前にニコリと笑っている写真か、郷土料理のアップ写真だと思うよ。以前にボクの日本語の先生に美味しくない日本食は何かと尋ねると、彼女は嘲笑うかのように、そして哀れむような目でボクを見ていたよ。まるで「日本の食べ物は全部美味しい決まってるでしょ。」と言わんばかりに。
最近、食べ物が載ったシールを生徒へのご褒美の為に用意したんだ。すると先生の一人がそれに気付いて「おいしそう!」と近づいてきた。事務所にいた他の先生たちもそのラーメンのシールを一目見ようと集まって来たよ。確かにそのシールは良く出来ていたけど、あくまでもシールなんだけどな。
しかし、こんなに豊かな伝統と文化をもつ日本料理というものが存在しながら、「うまい」と「美味しい」だけの未熟な言語表現しかないのかが不思議だ。ビールからワサビまで同じ表現なんだ。しかも、どうせ数時間後にはまた次の食事にありつけるっていうのに、病的なほどに食べ物について探求し続けられることがさっぱり理解できないよ。人生にはもっと考えるべきことは多いはずだよ。
こんな日本だから、例の雑誌がボクに特集を組ませてくれないかなぁ。大きな白いお皿にラズベリージャムサンドを盛りつけ、ボクの破顔一笑。これってドォデショ(笑)?

クリス・ウッドワード
英国 英語教師

Originally published in Fukuoka Now magazine (fn125 May 2009)
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Fukuoka City
Published: May 1, 2009 / Last Updated: Aug 1, 2019

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