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外国人の妻ですが、それが何か?

校で働き始めてすぐのとある夕方、同僚の50歳近くの日本人教師が何度か咳払いをしながら僕に尋ねてきた。「えーっと、ところでスコット先生は今晩の宴会に参加しますか?」「もちろんです。いったん家に戻ってから来る予定です。」「奥さんも連れて来るんですよね?会うのが楽しみですね。」
居酒屋に僕と妻が着くなり、宴会に参加していた同僚たちの視線は僕らに釘付けになった。「皆さんこんばんは。妻のテスです。」ブロンドヘアで青い瞳の妻を紹介すると、事務の女性たちは視線を交わし合いながら大ハシャギ。他の同僚も以前に妻に会ったことがある2人を除くと、みんな私たちに興味津々のようだっだ。


お酒も入り宴会も盛り上がってきたところで、恒例の質問タイムに突入した。最初は同僚が訳してくれる質問を聞いていたんだけど、次第に矛先は僕と妻に向けられ、「お箸は使えますか?」(中華料理だってお箸を使うんだから、当然使えるよ!)とか、「焼酎は飲めますか?」(そう思うなら、まずは試しに呑ませてくれよ!)なんて類いの、後でボクと妻とで笑い草になるような質問がほとんどになってきた。中でも「どうして日本に来たのか?」は、彼らの一番気になることだったらしく、まるで取り調べを受けてるみたいに根掘り葉掘り聞かれたよ。なぜ彼らがそこまで興味をもつのか理解出来ないし、答えなくちゃいけない状況に追い込まれるなんて変だと思わないかい?
「なぜ日本に来たの?(既婚の白人夫婦が揃ってどうして?っていう意味)」と日本人に真剣に聞かれた時には、大学時代に柔術に興味をもち、しかも僕ら2人とも日本の文化や言語に興味があったから、と説明するようにしている。だって彼らに食べ物や歴史など日本の大好きな点、つまり日本に来たくなった本当の理由を伝えても、曖昧な笑顔と相づちは打ってくれても、そこに理解はみられないんだ。でもこれが日本人女性と結婚している外国人が対象だと、いちいち言わなくても日本にいる理由は勝手に解釈されているんだ…。極めつけは妻がその場にいない時には「日本人女性についてどう思う?」と決まって聞かれること。もちろん日本人女性はとても可愛らしいよ、なんて答えようものなら、質問をした男性は勘ぐりを始めるのが常だ。
宴会からしばらく経って、同僚から温泉旅行に行こうと誘われたんだ。若い女の子も一緒だそうだ。彼らの目的はわかってたよ。日本人の既婚男性から、一緒に火遊びをするように仕向けられているみたいだ。この摩訶不思議な友情ってヤツが僕にとって重荷になっているのが本音なんだけど、同僚と上手く人間関係を築けなかったら外国人にとっても致命的なことだってことくらいは理解しているつもりだよ。そんなとき、例えば、若い女の子に色目を使ったり、飲み放題付きのいわゆる『宴会』を避けたければ、「妻が待ってるから早く帰らなくちゃいけないんだ。」と申し訳なさそうな顔をすればOKだ。二本指を頭にもってきて角をつくって恐妻であることを強調すれば、男性同僚の同情を得ること間違いなし!当の本人、テスはというとテレビゲームに没頭しているけど、誘いを断って早めに帰宅する口実として彼女を使うことを承諾しているしね。それに、実のところ妻はこういう状況を楽しんでいるんだ。
ある晩、英語の授業の後に感じが良くてキチッとした社会人学生と日本語の勉強について話していたんだ。すると何を思ったのか、日本人の彼女がいるかと唐突に聞いてきた。「僕が既婚なの知ってるよね?」と彼に言うと「日本人の彼女とピロートークで日本語学習をするのが一番だよ!」ときた。うーん…早速、妻テスに相談しなくっちゃ。これってドォデショ?

by スコット・バーク
アメリカ合衆国
英語教師、ライター

Originally published in Fukuoka Now magazine (fn126 Jun. 2009)

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Fukuoka City
Published: Jun 1, 2009 / Last Updated: Aug 1, 2019

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