Now Reports

福岡アートシーン

ートの入り口

ご存知だろうか? この福岡の街には官民さまざまなアート施設が存在し、地元のアーティストやキュレーターが活動している。個々のギャラリーや団体のサポートもあり、アートの受け入れに関しては恵まれた環境にあるといえるだろう。今回の特集では福岡のコンテンポラリーを始めとするアートシーンをご紹介。アートをより身近に感じてもらえば幸いだ。
福岡のアートシーンは、若手アーティストやひとびとの支持を得てますます新鮮でエネルギーに溢れたものになっている。また地元アーチストはキャリアを築く為に東京に赴く必要もない。本拠地を福岡に置きながら、実に自由に日本や世界のあちこちで活躍をしているのだ。福岡はコンパクトながら、市や県などの美術館があり、アーティストが活動するのに十分な支持が得られるという実にユニークな都市なのだ。地元アーティストの活動や、オーディエンスの熱意で写真や映像、ペインティング、パフォーマンスやインスタレーションに関するさまざまな試みがなされている。地元アーティストが国外でも評価され始めた今、より一層福岡のアートシーンに注目するべき時なのではないかと思う。
福岡には小さなギャラリーが多く存在する。実際にアーティストに会ったり、気軽に作品を見に行ったり、時にはアートの現場に関わることも可能だ。福岡は歩き回れる程「ちょうどいいサイズ」の街、天気のいい日には散歩がてらギャラリー巡りなんてのもいいかもしれない。

×× 注目のアーティスト! ××

江上 計太

1951年、大牟田市生まれ。東京芸術大学美術学部芸術学科を卒業後、1977年に帰福。昨年の横浜トリエンナーレでキュレイターの一人を務めた山野真悟らとIAF芸術研究所を立ち上げ、ミニマルアートやコンセプチュアルアートなど硬質な美術様式を福岡に導入した第一世代。複雑な幾何学形と鮮やかな色を組み合わせることで平面や立体、インスタレーションを構成する。1991年には「第5回バングラデシュ・ビエンナーレ最高賞受賞。2004年、集大成とも言える個展「Utopian Melancholia」を福岡市美術館にて開催。毎週土曜にはIAF Shopのカウンタ-のオヤジとして若いアーティストと朝まで飲み明かす彼の姿を見ることができる。http://www5f.biglobe.ne.jp/~egami/

 

乃美 希久子


1978年、熊本生まれ。九州産業大学卒業後、モダンアートバンクヴァルトを中心に作品を発表し始め、奇妙な形態のソフトスカルプチャーを基調としたインスタレーション作品で知られる。かわいい、気持ち悪い、不思議など作品をめぐる反応は様々。「寝床」(2003年/ヴァルト)、「空き家」(2004年/福岡県立美術館)、「乃美希久子個展」(2005年/アートスペーステトラ)とその実力を遺憾なく発揮しつづけ、今年はイタリアでの国際展や愛知県立美術館主催の大規模展覧会への参加が決定している。また、山をモチーフとした平面作品も発表しており、倉敷現代アートビエンナーレ西日本などにも参加。福岡では今後が最も期待される若手作家の一人である。
Photo: Hiroyuki Arikawa

 

安部 貴住

1976年、大分生まれ。九州産業大学卒業後、3号倉庫に第一期メンバーとして参加。巨大なサウンド・アートを展示し話題を集める。その後もトイレットペーパーやビニールシート、ペットボトルやハンガーなど身近で安価な素材を用いて光や音を発生させる装置群を多数発表。今年秋にはアメリカで開催される国際展「Forth of Nature」への参加も決定。2004年にアートスペーステトラを設立し、代表として同スペースの屋台骨を支えている。現在はテトラ内部のテーブルや椅子、家具などを鋭意作成中。その全貌は4月下旬のテトラリニューアル・オープンの場で明らかになるはずである。
×× さあ、「アート」を始めよう! ××

アートに興味を持ってしまったら、実際に観て、触れてみる事をお勧めする。アートコースを開いているギャラリーもあるし、近所のコミュニティーセンターに習いに行くのもいいだろう。要はあなた次第、自己表現ですから。ゲージュツはバクハツなのだ。

<絵画/アート教室>
○ モダンアートバンクヴァルト アートスタジオ
Introduction to conceptual thinking and ways to approach the construction of artwork. Tackling the issue of how to think about art as well as providing practical skills in painting, calligraphy, installation art, etc.
アートの考え方やモノづくりの基本など、プロを目指すひとからアートに親しみたいひとまで。
Every Friday 20:00~
Fee: エ1,000 (1 session/1回)
Tel: 092-633-3989

○ IAF SHOP 現代美術教室
Sessions are flexible and can cover the theory, concepts and practice of contemporary art, with mentoring from a successful artist.
デッサンからコンテンポラリーまで、何でもござれの江上教室。各々がやりたい事を実践を交えながら学べる。
Every Wed. 18:00~21:30
Fee: エ5,000 (Monthly/月)
Tel: 070-5199-5326 (IAF – Mr. Sato)

Many community colleges offer courses covering a wide range of genres, but strong Japanese language skills are normally required. Here’s a few to check out:
市内の大手カルチャーセンターでももちろん、絵画やデッサンをはじめとするアート講座を開いている。コースについて詳細は問合せを。

● 朝日カルチャーセンターTel: 092-431-7751
● NHK文化センター Tel: 092-271-2100
● TNC西日本文化サークル Tel: 092-671-3405
<絵画サプライ&クラフト>

○ 100円ショップ
Everybody’s best friend! For pens, pencils, paper, paints, and all the ingredients for your art, on a shoestring budget.
画材をはじめ、実にさまざまな素材が揃う100円ショップ、使わない手はない!

○ アートボックス
Materials for painting, design, models – literally a giant “Art Box”.
絵画、デザイン、模型材料を始め「アートボックス」の名の通り画材の玉手箱。アート教室についてもお問い合わせを。
Tel: 092-512-5880 Open: 9:30~19:30 Closed: Sun & Hol.
西鉄大橋駅

○ ペーパーイン
Paper specialty store & show room with 4,000 kinds of paper items. They also offer paper art classes.
定期的に紙漉やペーパークラフト等の紙教室も開いている紙専門店。約4000アイテムにも及ぶ特殊紙が1枚からでも買える。
Tel: 092-262-2264 Open: 10:30 ~ 18:30 Closed: Sat., Sun. & Hol.

○ 山本文房堂
Founded 1932. Stocks all kinds of tools for painting, calligraphy, models, papers etc. Ask the friendly, expert staff.
1932年創業、老舗の画材・額縁専門店。アートを愛する全ての人に文房堂あれ!アートスクールも開催している。
Tel: 092-721-0163 Open: 10:00~19:00 Closed: 3rd Mon.

○ ユザワヤ (Mina Tenjin)
Handicraft and hobbycraft goods shop with over 100,000 items including cloth, beads, artist supplies and stationeries.
手作りホビー材料店の大型専門店。あらゆる手作り材料や道具が揃う。10万品目以上あるという品揃えは圧巻!
Tel: 092-721-4141 Open: 10:00 ~ 20:00 Closed: never (except Mar. 31 & Aug 31 in 2006)

×× イチオシのアートギャラリー ××

僕の所属するアートスペーステトラの他にも、福岡には実に多くのギャラリーやアトリエがあり、ここではご紹介しきれない程だ。その中でもまずはスタンダードとも言うべきをご紹介したい。実際にアートの現場を訪れ、感じ、更なる「アート」を探して欲しい。

○ アートスペーステトラ
商業の中心である天神でもなく、若者に人気の大名や今泉でもない。古き良き博多の情緒が漂う須崎問屋街の一角の裏路地にひっそりと佇む3階建てのこのアートスペースは2004年4月のオープン以来、尖鋭的な展覧会や音楽ライブを数多く開催してきた。
3号倉庫に所属していたアーティスト安部貴住と都市型アートプロジェクトrhythmの代表として活動していた遠藤水城を中心に設立され、現在1階は展示スペースとカフェ、2階はrhythmとdettera、安部貴住のスタジオと一般に開放されたリラックス・スペース。3階部分はデザイン事務所attic associatesが居を構えている。一つの建物の中に様々な機能・役割を持つ個人/団体が同居しているところが大きな特徴であり、それによって多様なイベントを企画することが可能になっている。
地元の実験音楽家が一堂に会するライブ・シリーズ「Moan Ward」や福岡の若手作家を紹介する展覧会シリーズ「Project for Actual Art」、アーティストとミュージシャンが火花を散らせてぶつかり合う「One Against」シリーズなどの自主企画の他、広くアーティストにスペースを貸し出してもいる。

住所: 福岡市博多区須崎町2-15
電話: 092 262-6560
営業: 13:00~20:00
休み: 月曜
URL: http://www.as-tetra.info/
イベント: 現在、4月下旬リニューアル・オープンに向け改装中。

○ アートスペース貘
年間の展覧会回数が非常に多く、いつも新しい展覧会をやっているので行くたびに発見があるはず。展覧会観賞後は、是非カフェに立ち寄ってほしい。たった今観た作品についてじっくり考える時間を与えてくれるばかりか、もしかしたら作家本人とゆっくりお酒を酌み交わしながら話し合う機会を得ることができるかもしれない。アートが生活の中にしっくりと染み込んでくる、そんな気持ちになる特別な雰囲気を与えてくれる。

住所:福岡市中央区天神3-4-14 高栄ビル2F
電話: 092-781-7597
営業: 11:00~20:00
休み: Never
URL: http://www.artspacebaku.com/

イベント:
4/3 (月)~16 (日) 南たえ子展「海を超えていくブルー」
4/17 (月)~30 (日) 谷尾勇滋展「Private Garden」
無料

○ IAF Shop
若手のアーティストの発掘にかけては他の追随を許さない。大学などで美術の専門教育を受けなくとも「アーティスト」になれることをこのスペースは教えてくれる。カフェバーとしても機能しており、毎週末は若いアーティストが集い、制作談義に花を咲かせている。3名のディレクター陣がしっかりとアーティストと向き合い、サポートし、成長させる力量を持っていることも大きな強みである。ギャラリーはレンタルもしている、気軽に覗いてみるといい。

住所: 福岡市中央区薬院3-7-19(焼肉三馬力の2F)
電話: 070-5199-5326
営業: 18:00~23:00 (日 13:00 ~ 18:00)
休み: 月曜~水曜
http://members.jcom.home.ne.jp/iaf_shop/
<> 西鉄バス 新川町
イベント: Mike Benjamin Exhibition: “Then” マイク・ベンジャミン 3/30 (Thu.) ~ 4/16 (Sun.) Free

○ 三菱地所アルティアム
イムズの8階という最高の立地条件のもと、常にレベルの高い展覧会をみせてくれる貴重なアート・スペース。新しい試みを達成しなければならないという厳しいノルマをものともせず、斬新な展覧会を次々に展開する企画力と実行力は特筆に値する。新しくディレクターに就任した池澤廣和氏は地元福岡のアートシーンを活性化させていくモチベーションが高く、今後の活躍が注目される。

住所: 福岡市中央区天神1-7-11 イムズ8F
電話: 092-733-2050
営業: 10:00~20:00
休み: 第3火曜日
http://www.nishinippon.co.jp/jigyou/artium/artium.html
イベント:
「東信展 逆転の庭1」~4/23 (Sun.) 300円 他
「造形と映像の魔術師 シュヴァンクマイエル展 GAUDIA」4/27(木)~6/4(日)400円 他

○ ギャラリー・アートリエ
博多リバレインの地下にある公設ギャラリー。民間に運営を委託しており、2004年6月からアート系NPOミュージアム・シティ・プロジェクトがそれを担っている。情報発信としての場の特性を活かした様々なプロジェクトが生み出されており、「作品」と「観客」の新しい関係性を認識することができる。隣にあるカフェ、ライブラリー、ミュージアム・ショップと同ビル7・8階にあるアジア美術館も含めて様々な「アート体験」を可能にしてくれる。

住所: 福岡市博多区下川端3-1 リバレインセンタービルB2
電話: 092-281-0114
営業: 10:00~20:00
休み: なし
URL: http://www.ffac.or.jp/art/gallery.html
イベント: 「Navinじゃない?」4/14 (金)~5/28 (日) 無料

○ 共同アトリエ・3号倉庫
港湾部に位置する実際の倉庫を改装したユニークなアートスペース。若手のアーティストにアトリエと発表場所を提供するという基本方針のもとで、常時4~5名のア-ティストが所属し、個性的な展覧会を発表している。アーティストの制作現場と展示の両方を見ることができるのは本当に面白い。毎年アーティストが入れ替わっていくので、毎回驚きと新鮮さがある。遠出してでも行く価値のあるアートスペースのひとつ。

住所: 福岡市中央区那の津4-3-12
電話: 092-716-9393
営業: 12:00~19:00
休み: イベント期間中は休みなし
URL: http://www.3gosoko.ne.jp
<>西鉄バス 那の津四丁目
イベント: 年間を通して、所属アーチスト各々の個展・全員によるグループ展を行っている。詳しくは問い合わせを。

○ モマ・コンテンポラリー
草間彌生と台湾現代美術を軸に、完成度にこだわった展示をみせてくれる本当の意味でプロフェッショナルな数少ないギャラリー。年間の展覧会数こそ少ないが、その全ては見るべき価値が確かに存在する。看板も目立たず、入りづらい印象もあるが是非訪れて欲しい。藤浩志、角孝政、鈴木淳などの地元実力派アーティストの他、昨年は佐賀大学在学中の画家・井上絢子の個展を開催するなど若手の発掘でも優れた視点を打ち出している。

住所: 福岡市中央区大名1-1-3 石井ビル2F
電話: 092-715-0355
営業: 10:30~18:30
休み: 日曜・月曜・祝日
URL: http://www.ne.jp/asahi/moma/contemporary/

○ モダンアートバンクヴァルト
90年代に福岡の現代美術の中心として大きな役割を果たしてきたモダンアートバンクヴァルトは現在大きな改変期にある。展示スペースを縮小し、より「個展」がしやすい広さになったのは、新たな可能性を模索するアーティストにとって朗報だろう。アートの教室なども行なっており、単なる展覧会場というよりもアート・コミュニティの拠点として今後は広く活用されていくはずである。その重要性はいまだに失われていない。

住所: 福岡市博多区千代4-12-2
電話: 092-633-3989
営業: 12:00~18:00
休み: 日曜・月曜・火曜(3月・8月・12月は休館)
イベント: 「bordering」中村ケイコ絵画展 4/5 (水)~4/22 (土) 無料
<> 地下鉄千代県庁口

Originally published in Fukuoka Now magazine (fn88 Apr. 2006)

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Fukuoka City
Published: Apr 1, 2006 / Last Updated: Jun 13, 2017

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