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酒蔵の別邸に泊まる鹿島ステイ

州の酒蔵では、秋(9〜10月)に収穫した米で醸した新酒が11月頃から店頭に並び始めます。焼酎を好む土地柄という印象が強い九州ですが、米の生産が盛んで良質な水源が豊富な福岡や佐賀を中心とした北部九州は、日本酒の生産も消費も多い地域です。

酒蔵の別邸に泊まる鹿島ステイ

酒蔵の別邸に泊まる鹿島ステイ

今回の旅先は、江戸時代から昭和にかけて、酒や醤油などの醸造業で栄えた佐賀県鹿島市にある肥前浜宿(ひぜんはましゅく)。地名が意味するとおり、長崎街道の宿場町であり、有明海に臨む港町として酒造業や水産加工業が栄えた地域です。最寄駅はJR「肥前浜」駅。

酒蔵の別邸に泊まる鹿島ステイ

なんと、この駅には、地元の酒を提供するバーが直結していて、鹿島の酒の飲み比べなど、地元の酒を手軽に楽しむことができます。最近では、このユニークな駅にJR九州の観光列車「36ぷらす3」と「ふたつ星4047」が停車し、乗客は試飲や買い物を楽しんでいます。

酒蔵の別邸に泊まる鹿島ステイ

HAMA BAR 肥前浜駅
https://www.instagram.com/hama__bar/
佐賀県鹿島市肥前浜駅構内
・11:00〜16:30、金土日は夜も営業18:00~21:00

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町の歴史を象徴するかのような「漬蔵たぞう」は、創業120年以上の老舗の漬物屋。肥前浜駅前から徒歩1分の場所にあります。かつて魚を販売していたことからトレードマークは「魚市」。酒造りが盛んな地域で良質な酒粕を原料に作る漬物は、今も手作りされています。築100年以上の見事な蔵は、購入した山から材木を伐採し、宮大工だった親戚が建てたため美しいだけでなく、丈夫なんだとか。

酒蔵の別邸に泊まる鹿島ステイ

漬蔵たぞう
佐賀県鹿島市浜町1192
・9:00~18:00
・不定休

駅から6分ほど歩くと、白壁土蔵の酒蔵が多く残る通称「酒蔵通り」に着きます。ここ肥前浜宿では、現在3軒の酒蔵が酒造りをしています。

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光武酒造場
https://www.kinpa.jp/
佐賀県鹿島市浜町乙2421
1688年創業。佐賀県の中でも光武学校と呼ばれるほど杜氏としての輩出が多い蔵。IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)でのゴールドメダル受賞の他、焼酎やジンも造る。

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富久千代酒造
佐賀県鹿島市浜町1254-1
https://nabeshima.biz
酒蔵オーベルジュ「御宿 富久千代」、レストラン「草庵 鍋島」を営む。インターナショナルワインチャレンジ(IWC)2011年のSAKE部門でチャンピオン・サケに選ばれた「鍋島 大吟醸」を製造。

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峰松酒造場
https://www.hizennya.com
佐賀県鹿島市浜町乙2761-2
・9:30~17:00
1916年から続く造り酒屋。2019年に光武酒造場と統合。試飲や観光、酒の販売などを行う観光酒造「肥前屋」を営む。予約をすれば酒蔵見学も可能

酒蔵の別邸に泊まる鹿島ステイ

そして、今回の旅の目的地、「茜さす肥前浜宿」。酒蔵通りの一角に建つ明治(1868〜1912)中期ごろに光武酒造場の別宅として建てられた、入母屋造りの日本家屋を改修した宿泊施設です。肥前浜宿にある土蔵造の町家建築の典型的な様式を見ることができます。

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この建物自体は、別宅として利用された後は昭和後期から30年以上空き家でした。しかし、重要伝統的建造物群保存地区の認定に伴い2008年にリフォームし、社員の厚生施設として利用されていました。それをJR九州が賃借し、内装全体の改修と耐震補強を実施して2022年1月に宿泊施設としてオープン。客室は2つ。1階と2階にわかれ、1階共有スペースには佐賀で作られる伝統工芸や、建築や旅に関する書籍が展示されています。

茜さす肥前浜宿
https://www.akane-sasu.com/hizenhamashuku/
佐賀県鹿島市浜町字平松乙2686

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通りに面する間口は狭く、奥に長い町屋建築。

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浴室に設置されている青森ヒバを使った大型浴槽は快適そのもの。思わず長湯してしまいます。

酒蔵の別邸に泊まる鹿島ステイ

地酒や、郷土菓子がサービスに含まれます。飲料水は、蛇口をひねって出てくる水も地下水なので美味しく飲めるのですが、光武酒造場で酒を仕込む際に使われる「仕込み水」をボトルに詰めたものも提供されます。

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部屋に置いてある多様な酒器で、鹿島や嬉野など佐賀の日本酒を自由に楽しめます。その土地の味にこだわりたければ、このラベル『The SAGA』が目安になります。

佐賀県酒造組合『The Saga』認定酒
http://www.sagasake.or.jp/main/1582.html
佐賀県産原料100%、佐賀県内の蔵元で製造し、味や香りの審査に合格した純米酒と本格焼酎で、有効期限は認定日から1年間。

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朝食は、1905年から鹿島で飲食店を営む「割烹 清川」が宿まで仕出をしてくれます。地域の名物・温泉豆腐や酒粕漬けなど、地元の食材を使った和食をお部屋でゆっくりいただきます。

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朝の散歩はパワースポット巡り
光武酒造場裏の浜川からも見える高い石段を登ったところには、船乗り達が厚く信仰し、海難防止を祈願した「事比羅神社」があります。有明海や浜川河口の港町を見渡すことができます。

酒蔵の別邸に泊まる鹿島ステイ

また、酒蔵通りから30分ほど歩けば、祐徳稲荷神社にも行くことができます。肥前浜駅にはレンタサイクル(1日¥500)サービスがあります。
https://saga-kashima-kankou.com/rental-bicycle

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祐徳稲荷神社
https://www.yutokusan.jp
佐賀県鹿島市古枝乙1855
創建1687年。商売繁昌、家運繁栄、縁結びのご利益で知られ、年間300万人もの参拝者が訪れる日本屈指のパワースポット。117段の階段を上がった地上18mの舞台作りの上に建てられた本殿は、極彩色煌びやかな総漆塗り。本殿からさらに山道を20分ほど歩くと、市街地と有明海を一望できる奥の院に辿り着きます。

酒蔵の別邸に泊まる鹿島ステイ

酒蔵通りの南側には、有明海に繋がる浜川が流れています。対岸は多くの漁師や商人、船乗りなどが暮らした茅葺の町家が密集する「茅葺の町並み」と呼ばれる地域があります。酒蔵通りと合わせてこの二つの地域は、歴史的に価値のある地域として国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、美しい町並みを残しています。

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酒蔵通りから少し中に入ると、19世紀初期の住まいと推定される鹿島鍋島藩に仕えた武士の屋敷、旧乗田家住宅があります。茅葺き屋根と、上から見ると「くど(かまど)」の形をしている佐賀県を代表する建築様式・クド造りが特徴です。また、武家屋敷でありながら広い土間や畑もあり、当時の生活状況を伝える貴重な遺構として、市の重要文化財指定を受けています。

旧乗田家住宅
佐賀県鹿島市古枝甲115
・10:00~17:00
・休館:火曜
・見学無料

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肥前浜宿は歩いて楽しめるウォーカブルシティ。車では通れない小さな道を歩いたり、浜川から水を引き込む掘割、干し柿を吊るした軒先、建物を英語と日本語で説明した看板など、旅だからこその発見や気づきがたくさんあるはずです。
朝起きて散歩して、夜はしっとり日本酒を酌み交わす…ゆっくり暮らすように過ごす、重要伝統的建造物群保存地区でのステイです。

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Category
Travel
Saga Prefecture
Published: Dec 13, 2022 / Last Updated: Dec 13, 2022

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