JR九州本線から筑豊各地の産炭地へと繋ぐ支線を発祥とする、平成元年生まれの地域密着型の生活路線「平成筑豊鉄道」に今春、観光列車が誕生する。のどかな田園風景が残る筑豊地域を平均時速15キロで走行する「ことこと列車」は、土曜・日曜・祝日の1日1便限定。
シックな外観が里山風景に映える美しい車両は、元々走っていたディーゼルカーを、クルーズトレイン「ななつ星in九州」など、数々の観光列車を手がけてきた水戸岡鋭治さんがリニューアル。木材のテーブル、床、大川組子などを豊富に使ったインテリアには、本物を使うことで人々に大切に扱われ、価値を次へと繋げていくことにも関心をもってほしいとの願いが込められている。
「古いものをリニューアルし、新たに価値をつけることが好き」。これまでに60ほどの列車に関するプロジェクトに携わった水戸岡鋭治さん。列車は走りはじめてから成長がはじまるので、たくさんの人に育ててもらいたい、と語る。
直方駅(11:32発)から行橋駅(14:52着)までの約3.5時間を、沿線の食材を使ったフレンチキュイジーヌ(コース6品)を楽しみながらゆっくり旅する「ことこと列車」。料理はアジアのベストレストラン50(2016年、2018年)に九州地方から唯一ランクインした福岡・西中洲の人気店「La Maison de la Nature Goh」のオーナーシェフ・福山剛さん。沿線の9市町村の想いを込めた9種の前菜盛り合わせ、産炭地へのオマージュとして黒ダイヤと呼ばれる石炭を模った鱈と蕗の薹のフリットなど、世界のグルメが足を運ぶGoh監修の品々を楽しめる。ドリンク(別料金)は、車窓からも見える今川沿いにある林龍平酒造場(1837年創業)の日本酒「九州菊」や、あまおう苺を使ったクラフトビール「福智リッチ」、柚子風味の「英彦山サイダー」などご当地メニューが揃う。
福岡発着の日帰り旅行として、両親や友人にはもちろん、海外から福岡を訪れる旅行者にも、英語堪能な乗務員がいるので安心して勧められる。乗務員のユニフォームに久留米絣、料理の器に上野焼(あがのやき)などの伝統工芸品が用いられるなど、福岡の文化に触れることもできる。これからの桜や新緑の季節は特に、車窓からの眺めも期待できる。
ことこと列車
・土曜・日曜・祝日の1日1便(2019年3月21日〜9月29日)
・料金:¥14,800(税込|要予約)
・集合:直方駅(11:20)、到着:行橋駅(14:52)
・http://www.heichiku.net/cotocoto_train/