武雄のシンボルといわれる御船山の麓に、江戸時代末期（1845年）に作られた広大な日本庭園「御船山楽園」。この敷地内にある、レストラン「カジシナジー」。
「ロケーション・食材・料理・ワイン・サービスなど、思い思いの相乗効果（シナジー）を感じてほしい」と、佐賀で生まれ育ったオーナーシェフ梶原大輔さんが、2018年にオープンしたイタリアンベースの創作料理レストランです。
梶原さんが若かりし頃、バリスタを目指して訪れたイタリアで見つけて感銘を受けたのは、コーヒーではなく、地元愛に溢れる人々、そして彼らが提供してくれるその土地の食事でした。そこから食やカルチャーに関心を持つようになり、料理人として、その土地のメッセージを発信していくことに打ち込むようになります。
食材は、信頼する生産者から直接仕入れ、農園にも足繁く通い、釣りも自ら行います。そして、生産者が大切に育てる食材は形などに関係なく受け入れ、美味しい一皿へと変化させることに喜びを感じるという梶原シェフ。
料理だけでなく、食につながる環境全てに関心を持つ、彼の哲学を表すようなメニューの代表格に、ほうれん草の根から葉までパーツごとに調理方法を変えて調理する唯一無二の一皿、「ごぼうホウレンソウ」があります。
ある時、農園を訪れた際に収穫されずに畑の隅に残っていたホウレンソウに目が止まった梶原シェフ。これまでであれば破棄されるはずの大きく育ちすぎたそのホウレンソウを持ち帰って試食したところ、味わったことがない味に大きな衝撃を受けました。今では通常の4倍程の期間をかけて育てるこのホウレンソウが、カジシナジーの冬のシグニチャーメニューです（メニュー名に「ごぼう」がつくのは、ゆっくり育てられたホウレンソウの根が、ごぼうのような味わいをもつ、食べてもらいたいパーツになっているから）。
肉や魚を使うお任せコースもありますが、地域の食材を使うヴィーガンコースは、洗練されたイノベーティブなプラントベースのメニューが計10皿近く提供されます。いずれも、食材の味を引き出したナチュラルフレーバーですが、それぞれのメニューに隠れる小さなサプライズが楽しみで、目の前の一皿を食べながら、すでに次が気になる、そんな刺激に満ちたコースです。
3月取材時のメニュー：
1. 菊芋、仏手柑のスープ
2. 自家製ココナッツオイルのブレッドととシナモン香りづけ酒粕、梅
3. インカのめざめ（ポテト）、レンズ豆、乾燥舞茸、金柑、春菊の新芽、香草オイル
4. ごぼうホウレンソウ
5. 蕪、ふきのとう、菜の花
6. トウモロコシ、熟成ヤングコーン
7. ブロッコリー（茎のピューレと花、ダイコンの花）
8. かぼちゃ、安納芋、大豆、エノキ、パクチー
9. 光樹トマトの手打ちパスタ
10. 柑橘のデザート
11. 嬉野ほうじ茶
紹介メニュー（税込、別途サービス料10%）：ヴィーガンコース¥16,500（要予約）
